上がラミネート型、下がシリンダー型
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 2016年9月1日、ある小さな電子部品に興味を持った面々が東京・半蔵門に集結した。リアル開発会議が主催した【開発016】小型エネルギー(蓄電)デバイスの用途開拓プロジェクトの説明会に参加するためである。

 このプロジェクトは、村田製作所が開発した新型の小型蓄電デバイスを活用し、新たな商品や、新規モジュールを企画開発したいという参加者を募り、リアルな“場”で用途開拓するという内容だ。

 説明会は、このために開催されたマッチング会の位置付けである。リアル開発会議の2016年春夏号で、「商品企画をガラッと変える蓄電デバイス」として新たにテーマを掲げ、2016年6月末ごろから募集を開始。2カ月ちょっとの期間を経て開催にこぎつけた(関連記事)。

 この新型蓄電デバイスの何がすごいのか。簡単に説明すると、大きな電流を瞬時に放電したり、わずか数分間で容量の80%まで急速充電できたりすることに加え、安全で寿命が長く、タフな利用に堪えられるという特徴があることだ。技術的には、負極にチタン酸リチウム(LTO)と呼ぶ材料を使ったリチウムイオン二次電池の一種となる。

 ただ、現在広く使われている一般的なリチウムイオン二次電池とは大きく異なる。リチウムイオン二次電池なのに、電気2重層キャパシタのように利用でき、キャパシタに比べて漏れ電流が少なく、容量が大きいことが利点である。

分かりやすいプレゼンテーションを実施

マッチング会でのデモの様子
マッチング会でのデモの様子
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 マッチング会には、新型蓄電デバイスの用途を開拓したいという前向きな参加者が様々な業界から集まった。もちろん参加者全員が蓄電デバイスそのものに詳しいわけではない。このため、村田製作所の担当者との事前打ち合わせで、蓄電デバイスの特徴を分かりやすく説明するプレゼンテーションを実施することを決めていた。マッチング会での担当者による丁寧な技術説明は約20分に及んだ。終了後の参加者アンケートでも「分かりやすかった」と好評だった。

 さらに、“百聞は一見にしかず”ということで、利用シーンを模擬した3種類のデモンストレーションを用意した。

 まず、ワイヤレスマウスを使ったデモである。ワイヤレスマウスの電源である乾電池を取り外し、代わりに今回の蓄電デバイスを接続する。パソコンのUSBから10秒ほど充電するだけで、ワイヤレスマウスをある一定時間、利用できるというものである。

ワイヤレスマウスの急速充電のデモ動画。村田製作所の動画が別ウインドーで開きます

 こうした応用はマウスだけでなく、様々な小型の電子機器に展開可能だ。もちろん蓄電デバイスだけでは駆動時間が心もとない印象を持つ人もいるだろう。その場合、乾電池との併用を前提にした商品企画もあり得る。外出先で乾電池を購入できない場合などでも心配せずに小型電子機器を利用できるようになり、予備電池を持ち歩く必要がなくなる。

 筆者はデモを見ながらノートパソコンのUSB端子にアクセサリーのように取り付けておける「小型レーザーポインターがあるといいなあ」と感じた。