用語解説

 フェニル基(ベンゼン環)とイオウ(S)が交互に繰り返される分子構造を持った高性能エンジニアリング・プラスチックである。結晶性で,連続使用温度は200℃~220℃,高荷重(1.82MPa)での荷重たわみ温度が260℃以上と耐熱性に優れ,しかも引っ張り強さや曲げ強さが大きい。

 成形時の収縮率は0.3~0.5%と小さいので寸法安定性が良い。難燃性や耐薬品性の点でも優れている。欠点としては靱(じん)性が小さい,耐候性が良くない,成形時にバリが出やすいといった点が挙げられる。

 PPSは,架橋型,直鎖型,半架橋型の3種に大別できる。架橋型は低分子量ポリマーを架橋して高分子量化したもので,脆く,ガラス繊維で強化したグレードが中心。直鎖型は重合段階で架橋工程がなしに高分子量化したもので,靭性が高い。半架橋型は,架橋型と直鎖型の特性を併せ持つ特徴を持っている。

耐熱性活かし表面実装部品や自動車部品に採用

 応用面では,高い耐熱性を活かして,コネクタ,スイッチ,コイルボビンなど表面実装用の電子部品に多用されている。一方,耐熱性に加え,耐油性・耐ガソリン性に優れることから,自動車部品への採用も増えてきた。電装部品やエンジン周り,照明関連部品など熱のかかる部品に普及してきた。特に,ハイブリッド車に代表されるカーエレクトロニクス化が追い風になっている。

供給・開発状況

2006/10/12

日本精工,アンモニアに耐える
PPS樹脂使った圧縮機用軸受を発売


【図1】油や高温,薬品に対して耐性が高いPPS樹脂を保持器に採用することで,従来比4倍の寿命を実現した軸受「コンプレッサー用エルコンプ軸受」シリーズ (クリックで拡大表示)

 日本精工は,油や高温,薬品に対して耐性が高いPPS樹脂を保持器に採用することで,従来比4倍の寿命を実現した圧縮機向けの軸受「コンプレッサー用エルコンプ軸受」シリーズを発売した(図1)。同社はこの用途向けに,アンモニア雰囲気下でも使える直鎖型PPS樹脂の新グレードを開発した。融点は280℃。ナイロン46と比べて耐熱性や寸法安定性が高い。鉄と比べて耐久性が高いのも特徴の一つ。

 オゾン層の破壊や地球温暖化といった問題があることから,自然冷媒として二酸化炭素や炭化水素のほか,アンモニアを用いる例が増えている。潤滑油には冷媒が混入するが,従来のナイロン樹脂製保持器は,アンモニア雰囲気下では使えない。そのため従来は,アンモニア雰囲気下で軸受を使う場合,これまでは金属製の保持器を使用していた。

大成プラス,ナノレベルの凹凸を作りこんだアルミと樹脂の一体成形技術を開発

  大成プラスは,アルミニウム合金に特殊な表面処理を行うことによりナノスケールの凹凸を作りこみ樹脂との一体成形を可能にした「ナノ・モールディング・テクノロジー」を開発した。接合可能な樹脂は結晶性樹脂であるPPSやPBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂。例えば,PPS樹脂では高接着グレードなど最適なグレードを選択することにより,高い接合強度を実現した。

 想定している用途は,デジタル家電や自動車の軽量化が要求される部品などだ。例えば液晶,PDPなどの大型薄型テレビでは,現在樹脂の射出成形品などが使われることが多いが,大型化が急速に進んでおり重量増が問題になってきた。そこで本体部をアルミの薄板とし,ボスなどの取り付け部を樹脂とすることにより軽量化が可能ではないかと見る。自動車でもトランクルームなど鋼板が使われている部品をアルミの薄板を使うことによって計量化できる可能性がある。

ニュース・関連リンク

【決算】東レ,自動車やFPD市場の追い風を受けて増収増益

(Tech-On!,2006年5月10日)

日本精工,耐薬品性の高い圧縮機用軸受を発売

(Tech-On!,2006年2月1日)

ポリプラスチックス,原油価格上昇を理由にPOMとPPSを値上げ

(Tech-On!,2005年10月17日)

【IPF】大成プラス,ナノレベルの凹凸を作りこんだアルミと樹脂の一体成形技術を公開

(Tech-On!,2005年9月29日)

【FPD速報】出光興産が熱伝導率20 W/m・Kの樹脂を展示,将来は小型ファンの筐体に

(Tech-On!,2004年10月21日)