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アルミニウム合金とは

アルミニウムゴウキン

2006/04/07 10:00
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用語解説

 アルミニウム合金は,密度が2.7~2.9g/cm3と鋼に比べて約1/3と軽く,熱伝導率が240W/m・K(純アルミの値)と優れているのが特徴である。機械的性質は引っ張り強さが70MPa~600MPa,剛性に関連する縦弾性係数が70GPa~76GPaである。耐食性は表面の不働態皮膜が有効に効く場合,かなり優れている。

 部品形状に成形した後の使い方でも分類できる。そのまま使う非熱処理型と,成形時の残留応力を除去したり,機械的性質を一層高める目的で熱処理を施す熱処理型である。

展伸材

 アルミ合金の展伸材は,JIS(日本工業規格)では,Aという材料記号の次に,組成に応じて4桁(けた)の数字が付けられて表示される。このため,よく「数千番シリーズ」と呼ばれることがある。

 さらにこの4桁の後ろに,熱処理のタイプが付加される。Oは焼きなまし,Rは熱間圧延したまま,Tは溶体化処理した後に時効熱処理を施したものである。ここで溶体化熱処理とは,高温に加熱して合金元素を母相内に固溶させ,その状態を保つために急冷(焼き入れ)する一連の工程を指す。その後,時効熱処理によって狙った析出物などを組織内に分散させ,硬さや強さなどの機械的性質を改良する。T4やT6など,いくつか処理の条件が異なる処理がある。

 以下で,シリーズごとにその特徴を見ていくことにする。

《1000番系》
 工業用純アルミのシリーズで,構造材にはあまり適用されない。
《2000番系》
 「ジュラルミン」「超ジュラルミン」などと呼ばれるアルミ合金の代表格のシリーズ。アルミ(Al)に銅(Cu)やマグネシウム(Mg)を加えた合金で,機械的性質が優れているのが特徴である。ジュラルミンとして知られる「A2017」にT4熱処理を施したA2017-T4は,引っ張り強さが430MPa,0.2%耐力が280MPa,伸びが22%,疲労強さが90MPaである。超ジュラルミンと呼ばれるA2024-T4は,引っ張り強さが490MPaで0.2%耐力が290MPa,伸びが20%,疲労強さが140MPaである。このほか,鍛造用によく適用されるA2014などがある。
《3000番系》
 組成がアルミ・マンガン(Mn)系の合金で,塑性加工性や耐食性をあまり劣化させずに機械的性質を改良しているのが特徴である。代表格はA3003-Oで,引っ張り強さが110MPa,0.2%耐力が40MPa,伸びが30%~40%,疲労強さが50MPaである。
《4000番系》
 組成がアルミ・ケイ素(Si)系の合金で,アルミ合金の中では熱膨張係数が小さいのが特徴である。代表格はA4032やA4043など。A4032-T6は,引っ張り強さが110MPa,0.2%耐力が40MPa,伸びが30%~40%,疲労強さが50MPaである。
《5000番系》
 組成がアルミ・マグネ系で,中強度ながらも機械的性質のバランスがよいことから頻繁に使われる合金である。自動車の車体向けアルミ合金として知られている。代表格はA5005やA5052,A5083など。A5023-T34の機械的性質は,引っ張り強さが260MPa,0.2%耐力が220MPa,伸びが10%~14%,疲労強さが120MPaである。
《6000番系》
 組成がアルミ・マグネ・ケイ素系の合金。機械的性質が優れており,飛行機の胴体や自動車の車体向けに多用されている。代表格はA6061やA6063で,A6061-T6の機械的性質は,引っ張り強さが310MPa,0.2%耐力が280MPa,伸びが12%~17%,疲労強さが100MPaである。A6063-T6は,引っ張り強さが240MPa,0.2%耐力が220MPa,伸びが12%,疲労強さが70MPaである。
《7000番系》
 組成がアルミ・亜鉛・マグネ系の合金である。高強度が特徴。代表格は「超超ジュラルミン」と呼ぶA7075で,A7075-T6は引っ張り強さが580MPa,0.2%耐力が510MPa,伸びが11%,疲労強さが130MPaである。

鋳造材

 アルミニウム合金の鋳造材の実用合金は,通常の重力鋳造向けとダイカスト向けの2種類に分類される。アルミ合金の鋳造品では生産性に優れたダイカスト法によって鋳造されるものが多い。金型に急速にアルミ合金溶融液を押し込むダイカスト法は,生産リードタイムが短いので生産効率が高い。しかし一般的な方法でつくられたアルミ合金ダイカスト品は,中に空気をいくらか巻き込んでいるので,熱処理には適さないものが多い。

 エンジン・ブロックのような大型の鋳造品は,一般に重力鋳造で製造されることが多い。逆に小型なものはダイカスト品がほとんどである。以下では,鋳造材の合金型番ごとにその特徴を見ていくことにする。

《AC2A》
 アルミ(Al)・銅(Cu)・ケイ素(Si)系の合金で,重力鋳造向けである。成形型が砂型,シェル型,金型のいずれであっても,鋳造時の湯流れなどが優れていて鋳造性が良好である。鋳造材の中では,機械的性質が比較的優れていて溶接性もいい。重力鋳造法で砂型で鋳造した後に,熱処理を加えたAC2A-T6の機械的性質は,引っ張り強さが280MPa~340MPa,伸びが2%以下,ブリネル硬さHBが85~90である。
《AC2B》
 AC2Aと同様にアルミ・銅・ケイ素系で,これも鋳造性に優れた重力鋳造法向けの合金である。成形型は砂型,シェル型,金型のいずれにも適する。AC2AとAC2Bはかなり似ているため,設計仕様の変化に応じて素材選択を変えるといったことも行われている。重力鋳造法で砂型で鋳造した後に熱処理を加えたAC2B-T6の機械的性質は,引っ張り強さが220MPa~270MPa,伸びが3%以下,ブリネル硬さHBが60~80である。
《AC3A》
 アルミ・ケイ素系の合金で,重力鋳造法向け。これも鋳造性に優れ,成形型も砂型,シェル型,金型のいずれにも適している。重力鋳造法で砂型で鋳造したままのAC3A-Fの機械的性質は,引っ張り強さが140MPa~180MPa,伸びが3%~11%,ブリネル硬さHBが45~50である。
《AC4A》
 アルミ・ケイ素・マグネ系の合金で,鋳造性に優れた重力鋳造法向け。成形型も砂型,シェル型,金型のいずれにも適している。鋳造合金の中では機械的性質が比較的高く,溶接性も良好である。重力鋳造法で砂型で鋳造した後に熱処理を加えたAC4A-T6の機械的性質は,引っ張り強さが240MPa~290MPa,伸びが1%~2%,ブリネル硬さHBが75~85である。
《AC4B》
 アルミ・銅・ケイ素系の合金で,これも鋳造性に優れた重力鋳造法向け。重力鋳造法で砂型で鋳造した後に熱処理を加えたAC4B-T6の機械的性質は,引っ張り強さが220MPa~310MPa,伸びが3%以下,ブリネル硬さHBが65~85である。
《AC4C》
 アルミ・ケイ素・マグネ系の合金。鋳造性に優れており重力鋳造法向け。耐食性が比較的良好であるのが特徴である。重力鋳造法で砂型で鋳造した後に熱処理を加えたAC4C-T6の機械的性質は,引っ張り強さが200MPa~240MPa,伸びが1%~5%以下,ブリネル硬さHBが75~85である。
《ADC3》
 アルミ・ケイ素・マグネ系の合金で,ダイカスト法向けである。ダイカスト法で作製したADC3の機械的性質は,引っ張り強さが240MPa,伸びが1.8%,疲労強さが130MPaである。
《ADC10》
 アルミ・ケイ素・銅系の合金で,ダイカスト法向け。ダイカスト法で作製したADC10の機械的性質は,引っ張り強さが300MPa,伸びが2%,疲労強さが195MPaである。
《ACD12》
 ダイカスト法向けのアルミ・ケイ素・銅系合金。ダイカスト法で作製したADC10の機械的性質は,引っ張り強さが300MPa,伸びが2%,疲労強さが195MPaである。

供給・開発状況
2006/04/07

 アルミニウム合金の用途を拡大するために,これまで難しいと言われていた鉄やプラスチックといった異種材料との接合技術の開発が相次いでいる。このうち,アルミニウム合金と鉄の接合が難しい理由は,接合界面に脆い金属間化合物が形成されたり,鉄表面に酸化膜ができて,接合強度が確保できないためである。プラスチックについても,まったく異種の材料であるために基本的には接合しない。

マツダ,摩擦熱を使ってアルミ合金と鋼板を点接合する技術を開発


【図1】摩擦熱を利用した鉄とアルミの点接合技術。上が新接合法を適用したトランクリッド。○の部分が接合部分。下が装置(クリックで拡大表示)

 アルミニウム合金と鉄の接合について各メーカーが様々な手法を開発しているが,このほどマツダは,摩擦熱を利用してアルミニウム合金と鋼板を接合する技術を開発し,2005年夏に発売した新型「ロードスター」のアルミ合金製トランクリッドと鋼板製ボルトリテーナーの接合に採用した(図1)。

 ポイントは,相手材として亜鉛メッキ鋼板を使ったことである。接合プロセスとしては,まずアルミニウム合金の板材と鋼板を合わせて,アルミ側から回転工具を押し付けていく。すると摩擦熱で温度が上昇し,アルミが塑性流動を始め,亜鉛メッキ層が押し出されてメッキ層の下の酸化膜のできていない鉄がアルミと直接接触して固相接合する,という仕組みだ。

大成プラス,アルミニウム合金と樹脂の接合技術を開発

 アルミニウム合金に特殊な表面処理を行うことによりナノスケールの凹凸を作りこみ,樹脂との接合に成功したのが,成形メーカーの大成プラスである。


【図2】ソニーが2005年7月に発売したデータプロジェクター「VPL-CS20/CX20」(上)。左下が筐体に採用したアルミの展伸材で厚さは0.6mm。右下がその展伸材を表面処理後に取り付けのためのボスをインサート成形により作りこんだもの(クリックで拡大表示)

 ソニーが2005年7月に発売したデータプロジェクター「VPL-CS20/CX20」の筐体に採用された(図2)。大成プラスはアルミニウム合金の板材にプラスチック製をボスを一体成形で接合した後に,アルミ表面をヘアライン加工してソニーに納めている。  コンパクトなスタイルを追求した「VPL-CS20/CX20」では,アルミダイカストや樹脂成形では肉厚が厚すぎて小型・軽量化ができなかったために,この方法しかなかったという。

 同技術では,アルミニウム合金にある特殊溶液による処理を行うことによって表面に径20~30nm,深さも20~30nm程度のナノスケールの凹凸を形成する。これを金型にインサートして,PBT(ポリブチレンテレフタレート)などの硬質樹脂を成形することにより,この凹凸に樹脂が入り込んで,アンカー効果により接合する,という仕組みだ。デジタル家電や自動車の軽量化が要求される部品など向けに用途開拓している。

ホンダ,「レジェンド」でアルミの活用技術を究める

 ホンダが2004年10月に発売した新型高級車「レジェンド」は,前後輪の駆動力配分や後輪の左右の駆動力配分を自在に制御できる新しい4輪駆動システム「SH-AWD」を搭載したことで有名だが,材料面でもアルミニウム合金などの新素材を多用して注目されている。

 「SH-AWD」などの機動性の高い装備はそれだけ重くなりがちで,その優位性を可能な限り引き出し,高い運動性能を実現するために,車体の軽量化が必要だったためである。アルミニウム合金を中心に,マグネシウム合金,CFRP(炭素繊維強化プラスチック),高張力鋼板を駆使して,約151kgもの車体軽量化を達成した。

 特に目立つのは,アルミ合金の大幅な採用だ。車体パネルではボンネット,トランクリッド,フロントフェンダ,車体骨格ではフロント/リアのバンパビーム,シャシーではフロント/リアのサブフレーム,フロント/リアのサスペンション・アーム,フロント/リアのブレーキキャリパ,エンジンではインテーク・マニホールドといった多様な部品にアルミ合金を採用した。

 これまでホンダは,1990年9月発売のスポーツカー「NSX」や,1999年11月発売のガソリンエンジン・ハイブリッド車「インサイト」など総アルミボディのクルマを開発してきたが,いずれも少量生産の車種で,大量生産の車種ではアルミ合金の適用部位は限られていた。コストが高く,量産に見合った製法が確立されていなかったため,大量生産車ではアルミ合金を幅広く使うことはできなかったのである。

 それが月産2500台規模の新型レジェンドで可能になったのは,一つには,NSXから十数年という歳月を経て,アルミ合金の自動車材料としての成熟度が高まり,その成形・加工技術の完成度が高まってきたため。もう一つは,軽量化のためにアルミ合金を使おうという強い決意の元,アルミ合金をより安く使えるようにする技術を開発したためである。

高速ブロー成形などアルミ化技術を開発

 アルミ化のために開発した技術は多岐にわたるが(詳細は,『日経ものづくり』2004年12月号の特集「材料が旬 Part2ホンダ「レジェンド」アルミの活用技術を究める」を参照),そのうち高速ブロー成形の工夫の一つを紹介しよう。

 高速ブロー成形とは,約500℃に加熱したアルミニウム合金の板を高圧空気で金型に押し付ける方法だ。超塑性の領域であるため成形時に通常の10倍の伸びを示すために深絞りが可能になるが,サイクルタイムが長いのが欠点だった。それをホンダは高圧空気の圧力を3倍(3MPa)に高めて,板の加熱方法を工夫して,従来は外板一枚10分強かかっていたのを1分で成形できるようにしたのである。

ニュース・関連リンク

金属加工の三力工業,多彩な技術で製造法を提案

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