スマートメーターやセンサーノードといった端末での通信に向けて開発検討が進められているLTE機能群の総称。3GPPにおいてRelease 11から順次機能規定がなされ、現在は2016年に仕様確定予定のRelease 13に向けて機能追加の検討がされている。5Gでは、IoT/M2M向け通信を主要なユースケースの1つとすることから、5Gの仕様が盛り込まれるRelease 14以降でも機能強化が加速されると期待されている。

 M2M(マシンツーマシン)向けの通信は、3GPPにおいてはMTC(Machine Type Communication)という新たなユースケース領域として捉えられている。通信量や通信頻度は小さいが、多数存在し、場合によっては乾電池で10年間動作させなければならないという、従来の携帯電話機端末とは全く異なる特徴を持つからである。こうした特徴に対応すべくLTE-Mでは、端末の低消費電力化、低コスト化、広カバレッジ化、および多数端末の基地局収容を可能にする無線技術の検討が進められている。

 端末の消費電力削減については、端末が周期的に移動通信網に対してレポーティングする間隔を可能な限り、長くする方法が考えられている。従来の「携帯電話」では、着信に備えて端末の在圏情報(どの基地局の配下にいるか)を、網に伝えるために周期的かつ頻繁に端末が情報を発呼する必要があった。しかし、センサーノードやスマートメーターのユースケースでは基本的に「着信」がない。この性質を考慮することで、長時間発呼を行わず、その間、スリープモードに移行することで電力消費を低減する方法などが考えられている。

 低コスト化の方策としては、例えば、端末が通信に利用する帯域幅を狭くして、端末(通信IC)のハードウエアの複雑さを低減することが考えられている。この他、通信を半2重にすることで送受信信号の混信を防ぐデバイス(デュプレクサーなど)を排除する工夫もある。上記のユースケースでは高いスループットが要求されることはないからである。既に3GPP Release 12では1.4MHz幅で通信する「カテゴリー0」が標準化されている。この1.4MHz幅の信号は、最大20MHzのLTEの通信信号の中に組み込んで使うことが可能だ。カテゴリー0に対応した端末は、受信アンテナ数も1本に削減されている。従来の最小仕様の「カテゴリー1」であってもダイバーシティー確保のために2本が必須となっていた。Release 13では、送受信の帯域幅を200kHzまで狭めることも検討が進められている。

 広域カバレッジについては、例えば、出力を増加したり、変調などの要求仕様を緩和したり、同じフレームを繰り返し送ったりするなどの方法でリンクバジェットを向上させることが検討されている。このリンクバジェットの向上は、単に1つの基地局への収容範囲(距離)の増加が意図されているだけではない。センサーノードやスマートメーターは例えば地下室やコンクリートで囲まれた屋内深くに設置されている場合がある。これらも収容可能にしようとすると必然的にリンクバジェットの改善が必要となる。

赤田 正雄(あかた まさお)
ノキアソリューションズ&ネットワークス
テクノロジー・ディレクター
電気通信業界において30年を超える経験を有し、2014年10月より本職に就任。同社の最新技術やソリューションの紹介、次世代(5G)モバイルシステムの日本法人における検討・推進体制を統括する。