X線ではなく粒子線をがん病巣に照射する粒子線治療装置は、がん病巣の体の表面からの深さに合わせてピンポイントで粒子を照射できるという特徴を持つ。その特徴を一層進化させたものが、「スポットスキャニング」を取り入れた粒子線治療装置である。

 スポットスキャニングとは、粒子線のビームを拡散させるのではなく、細い状態のまま加速器と電磁石で3次元方向に細かくスキャンさせる照射方式のこと。がん病巣の複雑な3次元形状に合わせて塗りつぶすように照射できるため、正常組織への不要な照射を防げる。粒子線の一種である陽子線を用いたがん治療装置で実用化が先行している。

 スポットスキャニング方式を採用した陽子線治療装置は、国内では2011年1月に薬事承認を取得した。現在、名古屋市のクオリティライフ21城北内にある「名古屋陽子線治療センター」で同技術を採用した治療施設が稼働している。治療装置は日立製作所が製造したものである。

名古屋陽子線治療センターの外観
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