DNAの塩基同士の水素結合を利用したデバイス。塩基配列が不明なDNAを解析したり,特定の病気と関係があるDNAが血液内に存在するかどうかを判別したりできる。

 DNAは,2本の鎖が絡み合った二重らせん構造を持つことが知られている。人間など生物の細胞には核があり,核内には染色体が存在する。この染色体を構成しているのがDNAである。なお,DNAのうち,遺伝のためにたんぱく質を作るなどの役割を果たすものを遺伝子と呼ぶ。

 DNAの鎖には,A(アデニン),T(チミン),G(グアニン),C(シトシン)という四つの塩基が並んでいる。このうち「AとT」「GとC」という特定の塩基同士が水素結合することで,2本鎖を形成する。DNAチップは,この水素結合を利用する。あらかじめ塩基配列が分かっている1本鎖のDNAを基板上に固定しておき,そこに検体を反応させると,対応する塩基配列を持つDNAの鎖のみが結合する。これにより,さまざまな解析が可能になる。

 DNAチップの開発は,米Aff ymetrix,Inc.や米Agilent Technologies,Inc.などが先行してきた。これらは「蛍光検出(あるいはマイクロアレイ)型」と呼ぶ方式のDNAチップである。調べるDNAに蛍光標識を付与しておき,チップとの反応後にレーザを照射して蛍光の有無や位置を確認することで,結合したのかどうか,どのDNAと結合したのかなどを判別する。主に研究用途で利用されてきた。

 一方,産業用途に向けて,東芝が「電流検出方式」と呼ぶ独自のDNAチップを開発している。2009年7月30日,このDNAチップを利用したHPVのウイルス型判別用の体外診断薬について,厚生労働省の薬事承認が下りた。

特定の塩基同士(AとT,GとC)が水素結合して2本鎖を形成する