PID(Potential Induced Degradation)現象とは、メガソーラー(大規模太陽光発電所)などで太陽光パネル(太陽電池モジュール)を多数、直列に接続して高電圧下で運用した場合に発現する劣化現象で、発電量が大幅に低下するのが特徴。2005年に中国の太陽光パネルメーカーが初めて報告し、その後、欧米のメガソーラーで大幅に出力低下する現象が報告され問題となってきた。2010年頃からドイツの研究機関などで研究が本格化した。
 発生メカニズムについては、まだ完全に解明されているわけではないが、最近の研究から徐々に原因が分かってきた。最も有力な説では、比較的、高温高湿の条件下で、太陽電池モジュールに高電圧がかかると、ガラス基板からナトリウムイオンが封止材中に拡散して、シリコンセルの表面や内部に侵入することが原因とされている。
 これまで国内では、明確な形でPID現象が報告されたことはない。だが、高電圧で運用するメガソーラーが急増し、今後、送電ロスを減らすため、1000Vにまで電圧を上げたシステムの採用が流れになっている中、PID対策に関心が高まっている。すでに太陽光パネルメーカーの多くが対策に乗り出しており、対策済みとのリリースも増えている。

産業技術総合研究所・原浩二郎氏によるPID対策済み(酸化チタン系薄膜あり)モジュールと未対策モジュールのPID試験前後の電流電圧特性(出所:産業技術総合研究所の広報資料)
産業技術総合研究所・原浩二郎氏によるPID対策済み(酸化チタン系薄膜あり)モジュールと未対策モジュールのPID試験前後の電流電圧特性(出所:産業技術総合研究所の広報資料)
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