広域系統運用機関がどのような仕事をするのか、具体的な設計はこれからである。電力システム改革専門委員会の報告書によると、以下の業務を行う計画とある。

◎需給計画業務/系統計画業務
 エリアの系統運用者(地域電力会社)が作成した電源開発計画、流通設備計画を基に、1~10年程度先の日本全体の需給計画を策定する。併せて、地域間連系線及び主要幹線の系統計画を策定し、これらを国に提出する。

◎長期の供給力確保のための予備力管理
 需給計画及び流通設備計画から供給力や流通設備を長期的に見通し、不足が明らかになった場合には、将来的な供給力不足を回避する最終手段として入札による電源建設者の公募を行う。

◎需給及び系統の広域的な運用
 需給運用に必要となる長期から短期の計画の策定に際して、広域的な観点から必要となる電源及び送電設備の作業停止計画の調整などを行い、給電計画を策定する。また、実需給断面においても、再生可能エネルギーなど変動電源の増加に伴い広域での需給調整・周波数調整の必要性が増すことに伴い、これに柔軟に対応した連系線及び基幹送電線の潮流の管理等を行い、各エリアの系統運用者と協力して需給、周波数調整に当たる。

◎需給逼迫緊急時の需給調整
 需給逼迫緊急時には必要に応じ、需給調整を行う。

◎系統アクセス業務
 系統利用者の希望に応じ、接続検討の受付、検討結果の事業者への通知などを行う(配電系統を除く)。

◎系統情報の公表
 系統情報の公表を行う。不十分な場合は国が勧告・命令等を行うことも想定。

◎系統信頼度評価
 1~10年程度先の需要に対して適正な供給信頼度が確保されているかどうかの評価を行い、その結果を国に報告する。

 また、今後導入の可能性があるリアルタイム市場アンシラリーサービス市場容量市場については、この広域系統運用機関が運営するのか、それとも地域の電力会社が運営するのかは明らかになっていない。連系線の運用ルール・系統アクセスルールなどの各種ルール作りの役割分担は、国が基本的な指針を定め、広域系統運用機関がルールを策定し、最後に国がチェックする形になるという。

 広域系統運用機関の成功は、地域の電力会社に対して強い権限でリーダーシップを発揮できるかどうかにかかっている。組織の独立性や人材の力量がカギを握るだろう。また、政府は5~7年後に発送電分離を行う方針を打ち出しているが、そのときに広域系統運用機関と各地域の送配電会社の役割分担がどうなるのかは、あまり明らかになっていない。これは、おそらく「広域検討運用機関」の具体的な機能や成果が見え始めた段階で、改めて議論されるのではないだろうか。

広域系統運用機関の役割
広域系統運用機関の役割