容量市場とは、供給量(キロワットアワー:kWh)ではなく、将来の供給力(キロワット:kW)を取引する市場である。系統運用者が、数年後の将来にわたる供給力を効率的に確保するために、発電所などの容量を金銭価値化し、多様な事業者に市場で取り引きさせる仕組みのことを指す。

 現在、日本には容量市場はない。これまでは、一般電気事業者の独占を認める代わりに供給義務を課すことで、十分な予備力を確保できたからである。しかし状況は変わろうとしている。2013年2月8日、政府の電力システム改革専門委員会は容量市場の創設を提言した。今後、電力市場が全面自由化されると、現在の供給義務はいずれ廃止しなければならなくなる。すると、将来の予備力をどう確保するかが課題となる。容量市場が供給力確保の新たな手法になろうとしているのである。

 電力自由化が進む海外では、容量市場が既に存在するところがある。かつて欧米では、kWhのみを取引する電力スポット市場や電力先渡市場があれば、発電所の建設コストも十分回収できると考えられてきた。供給が不足すればkWh価格が高騰するので、それで建設コストも回収できるはずだった。しかし、実際にはこれらのkWhオンリーの市場収入だけでは、需要ピークに対応する予備力用発電所などの建設コストや維持コストをまかなうには不十分で、これらを運営する事業者がいなくなってしまう懸念が出てきた。発電所の建設には時間がかかり、いくらkWh価格が高騰しても、そのあとで建設したのでは間に合わなかったのである。

 そこで、市場参加者に対し、将来にわたって一定の予備力を確保する義務を課したうえで、その予備力を市場メカニズムによって調達する「容量市場」が考案された。規制メカニズムと市場メカニズムを掛け合わせたハイブリッド市場と言えよう。容量市場では、仮に1年間まったく発電しなくても、供給能力(容量)さえあれば対価が支払われるという点に特徴がある。