新電力(PPS)が30分同時同量を達成できず、供給電力に不足が生じると、電力会社の系統運用部門が代わりに電力を補給するが、その対価として新電力が電力会社に支払うペナルティ料金を「インバランス料金」と呼ぶ。インバランス料金とは通称であり、正式には「変動範囲内(外)発電料金」と言う。電気事業法関係省令の「一般電気事業託送供給約款料金算定規則」で定義された認可料金である。

 変動範囲とは、新電力の30分単位需要量の3%と決められていて、不足量が3%以内に納まっていれば比較的安い「変動範囲内発電料金」で済むが、3%を超過すると高価な「変動範囲外発電料金」を支払わなければならない

※逆に、供給電力が需要量を上回り、余ってしまった分については、3%の変動範囲内ならば電力会社が一定価格(託送余剰電力購入料金)で買い取ってくれるが、3%を超えて余った分は無料引き取りとなる。
インバランス料金の詳細
インバランス料金の詳細

 インバランス料金の水準は、各地域の電力会社の発電設備構成や経営状態によって差があり、季節や時間帯によっても異なる。各電力会社の「託送供給約款」に料金表が載っていて、各社のホームページからダウンロードできる。2013年1月時点の単価は概ね下表の通りである。

インバランス料金の水準
変動範囲内変動範囲外
夏期の昼間夏期以外の昼間休日・夜間
9円~15円台33円~51円台28円~45円台16円~28円台
夏期とは7月1日~9月30日、昼間とは8時~22時である

 一般に、需要規模が小さいほど需要を予測しづらく、同時同量の達成も難しくなる傾向がある。規模の小さい新電力にとっては、高額なインバランス料金は死活問題になる。このため、これまでの電力制度改革議論では、インバランス料金の価格水準や価格の透明性を巡る問題が常に議論の的になった。特に、インバランス料金が不当に高いのではないかという新規参入者の声は根強く、これまで何度か算定方法が見直され、結果的に値下がりしてきた歴史がある。また、2008年には、日本卸電力取引所の電力スポット市場から電気を調達するときの特例として、変動範囲の母数を自社需要ではなく、エリア市場全体の取引量とみなすことにより、3%の変動範囲を超える可能性が減り、小規模な新電力にとって有利なルールに変更された。

 他方、インバランス料金が卸電力取引市場の実質的な価格上限になっていることから、規制料金により市場が歪められているという指摘もある。なぜ価格上限になるかというと、卸取引市場で電気を買う新電力にとっては、まったく電気を買わなくても最後は電力会社が不足分を賄ってくれ、その結果としてインバランス料金を支払えば済むため、それ以上の価格で買い入札するような行為はしないのである。

 このようなインバランス料金を巡る様々な課題を抜本的に解決しようという動きがある。現在の電力システム改革議論で取りざたされている、1時間前市場やリアルタイム市場の導入である。これは、インバランス料金の決定プロセスに市場メカニズムを利用することで、料金の透明性と公平性をドラスティックに向上させようという狙いがある。