火力発電所の「リプレース」とは、発電所設備の更新事業のうち、老朽化した古い発電所を廃止・撤去して、同じ地点に全く新しい発電所を建設(スクラップ&ビルド)することをいう。

 一方で、経年劣化した主要部品を新しいものに交換したり、設備を追加することで出力を増強することは「リパワリング」と呼ばれる。「リパワリング」は、既存の設備を有効利用することでコスト削減が図れるため、これまで多くの火力発電所で「リパワリング」が行われてきた。汽力発電設備にガスタービンを追加することで、コンバインドサイクル型の発電方式に転換する方法が一般的である。

 しかし、本格的に老朽化してしまった火力発電所は、部分的な更新である「リパワリング」では補修しきれなくなり、全面的な更新である「リプレース」が必要となる。

 日本にある火力発電所(電気事業用)は約180カ所で、合計約1兆3500万kW分の出力がある。経済産業省の試算によると、今後、火力発電所の経年が進み、2030年時点では約半数の発電所が運転開始から40年を超過する見込みである。具体的には石油火力の96%、天然ガス(LNG)火力の52%、石炭火力の32%が40年を超過する見込みである。

 このような状況に対応すべく、各電力会社は、新しい火力発電所の新増設計画を立てている。このうち「リプレース」方式での新増設計画が、いくつかプロジェクト化されている。これらのプロジェクトは、単純に設備更新すれば良いといったものではなく、燃料特性や安定供給、系統連系、出力調整機能(負荷追従運転機能)、環境特性、コストなどを総合的に勘案する必要がある。

最近の火力発電所リプレース実績(主なもの)
※高効率コンバインドサイクル発電方式へ
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 最近のリプレース実績(上表)を見ると、老朽化した石炭火力や石油火力を天然ガス(LNG)を燃料とした高効率コンバインドサイクル発電へと転換(燃料転換)するものが多い。環境アセスメントの手続きをクリアするためには、どうしても環境負荷の低減(CO2排出量の削減など)が必須条件となっているためである。ここで、リプレースによる環境負荷低減効果(CO2排出量の低減効果)について一例を挙げておくと、前表にある中国電力の水島発電所では、リプレース前のCO2排出量が1.008kg-C02/kWhであるのに対し、リプレース後のCO2排出量は0.376kg-C02/kWhであり、約60%のCO2削減を達成している。

 ちなみに、1979年の第3回IEA閣僚理コミュニケにおいて採択された「石炭に関する行動原則」において、ベースロード用の石油火力の新設およびリプレースの禁止が定められ、日本も当該方針を順守しているため、石油火力発電所へのリプレースは最近では行われていない。

 また、今後のリプレース計画の主なものは下表のとおりである。

今後の火力発電所リプレース計画(主なもの)
※高効率コンバインドサイクル発電方式へ
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 2019年以降に一般電気事業者が新増設(運転開始)する火力発電所は、2012年9月に制定された「新しい火力電源入札」制度の対象となることが決まっている。このため、今後の老朽火力発電所のリプレースは、当該制度の対象となる。

 LNG火力発電所や石炭火力発電所については、新規にリプレース計画を立て、環境アセスメントの手続きや建設工事を経て、運転開始までにかかる期間は、短いもので6~7年と言われている。原子力発電所の長期停止に伴う電力不足の昨今、火力発電所建設にかかるリードタイムを少しでも短くするため、環境負荷低減効果が高い老朽火力のリプレースに関しては、環境アセスメントの手続きを規制緩和(期間短縮)すべきとの要望があり、経済産業省と環境省の両省で検討中である。