電力小売市場については、2000年から参入規制が順次緩和され、地域の電力会社(一般電気事業者)以外に、電力小売事業に新規参入した事業者(新電力)も各地で電力小売りを行っている。

電力小売市場の自由化範囲の拡大
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 これまでの電力制度改革により、電力小売市場の自由化範囲が順次拡大したステップを表すと、右図のとおりである。

 段階的な自由化範囲の拡大(部分自由化)が進む中で、残された規制部門(自由化されていない部門)は、低圧および電灯(家庭用)のみとなっていることから、これらも自由化し、国内における電力小売市場を「全面自由化」(完全自由化)しようとする動きがある。

 2007年には、経済産業省(電気事業分科会)において、家庭部門も含めた全面自由化の是非が検討されたが、「メーターの設置費用(コスト)が、家庭部門の需要家が得られる価値(ベネフィット)を上回る可能性が高い」として、全面自由化は先送りされることになった。2007年当時は、スマートメーターやHEMSは、まだ現実的なものではなく、需要家側のメリットは低く見られていたのである。

 2012年7月に経済産業省が発表した「電力システム改革の基本方針」では、全面自由化に向けた動きが加速し、

・家庭などの小口小売り部門需要家が、供給者や電源を選択できるように全面自由化を実施する(地域独占を撤廃する)。
・競争の進展に応じて、一般電気事業者の供給義務や料金規制を撤廃する(総括原価方式を撤廃する)。
・全面自由化に伴う需要家保護策として、最終保障サービスの措置および離島の電気料金の全国平準化の措置を整備する。

との方針が示されている。

 さらに、2012年12月の電力システム改革専門委員会では、「全面自由化」の代償措置についても周到な制度設計が必要として、供給責任やユニバーサルサービスの確保など、市場原理に委ねるだけでは解決しにくい公益的な課題にどのように対応するか、について議論が重ねられた。そして、需要家保護策に加えて、経過措置(需要家に対する激変緩和措置)の論点も整理されている。

 今後の政策転換がなければ、電気事業法が改正され、早ければ2~3年後には全面自由化がスタートする見込みだ。2014年度は東京電力が政府の方針を受けて、スマートメーターの設置を開始する予定であり、制度(全面自由化)と技術(スマートメーター)の両輪で、電力小売市場の活性化が進むだろう。