2012年11月末、当時の民主党政権は、関係閣僚により構成される「エネルギー・環境会議」において、再生可能エネルギーの普及や節電・省エネルギーの推進などに関する具体策を盛り込んだ「グリーン政策大綱」の骨子を発表した。この「グリーン政策大綱」は、今のところ、「骨子」のままとなっている。

 この「グリーン政策大綱」は、2012年7月に閣議決定された「日本再生戦略」と、同年9月のエネルギー・環境会議で決定された「革新的エネルギー・環境戦略」が基になっている。これらの戦略を具体化し、実現するためのロードマップを国民に広く示すために、当時の民主党政権は2012年末までに「グリーン政策大綱」を取りまとめ、これを閣議決定する予定だったが、骨子を公開し、パブリックコメントを募集している段階で中断してしまった。

 この「グリーン政策大綱」(骨子)では、基本方針として「原発依存度を減らし、化石燃料依存度を抑制するため、グリーンエネルギーの利用を最大限引き上げていく」との方向性が示されており、これに沿って以下の「先導的5分野」を掲げている。

グリーン政策大綱で定めた先導的5分野
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 この5分野に関しては、重点施策ごとの具体的な数値目標も掲げられている。主なものは以下のとおりである。

1. 太陽光、風力、地熱などの自然の恵みの最大活用
・2015年以降の実用化を目指し、浮体式洋上風力発電施設(商用規模)を設置、稼働
・2020年度までにバイオマス利用を約2600万トンに(600市町村で推進)

2. スマートコミュニティなどによる需給一体管理・効率化
・2016年度までにスマートメーターを総需要の8割に導入
・2020年度までに集合住宅など100万戸で一括受電を活用

3. 世界最高水準の省エネのさらなる進化
・2030年までにHEMSを全世帯へ普及
・家庭用燃料電池を2020年時点で140万台、2030年時点で530万台導入
・新車販売に占める次世代自動車を2020年までに50%、2030年までに最大70%とする
・2020年までに次世代自動車用の普通充電器200万基、急速充電器5000基導入
・2030年までにコジェネを現状の約5倍程度導入(燃料電池含む)

4. エネルギー利用の幅を広げる蓄電池
・2020年度までに大型蓄電池を揚水発電所と同程度の2.3万円/kWhまで低コスト化
・2020年度までに世界全体の蓄電池市場(20兆円)の5割のシェアを獲得

5. 世界をリードするグリーン部素材
・2020年までに現行の2倍の磁力を持つレアアースフリーの高性能磁石を開発
・2030年までにプラスチックの2割を石油フリー化

 上記のように「グリーン政策大綱」(骨子)では、各分野の重点施策について、2020年や2030年時点の数値目標が掲げられているもの、実現に向けた具体的手段は示されておらず、実現性の点では未知数なものが多い。例えば、HEMSの国内普及率は1%未満(2011年度時点)であり、2030年までにHENSを全世帯へ普及させるためには、補助金などの財源も必要になる可能性がある。

 一方で、これらの施策は、これまでに経済産業省や環境省などの各省庁が検討してきた施策を束ねて5分野に整理したものでもある。例えば、2020年までにバイオマス利用を約2600万トンという目標は、2012年9月に農林水産省が中心となって取りまとめた「バイオマス事業化戦略」で定められたものである。

 政権交代により「グリーン政策大綱」そのものや、大綱(骨子)に記された個別の重点施策がどのようになるのだろうか。