CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)とは、地球温暖化対策として注目されている技術である。火力発電所(主に石炭火力発電所)や工場などで発生する温室効果ガス(主にCO2)を、大気に放出する前に分離・回収して貯蔵する一連のプロセスを指す。技術的には大きく分けると、(1)分離・回収、(2)輸送、(3)圧入・貯留の3段階の技術からなる。

CCSの要素技術
(1)分離・回収火力発電所や工場などの排ガスから、CO2を分離・回収する
(2)輸送分離・回収したCO2を貯留地点まで輸送する
(3)圧入・貯留CO2を地下の貯留層(帯水層)などに、圧入し、貯留する

 CCSが、日本の環境技術政策として表舞台に登場したのは2008年である。同年3月に取りまとめられた「Cool Earth――エネルギー革新技術計画」において、CCSは重点的に取り組むべきエネルギー革新技術(21項目)の一つとして位置づけられた。

 また、同年7月の洞爺湖サミットにおいて、首脳宣言として「我々は、2020年までにCCSの広範な展開を始めるために、各国ごとの様々な事情を考慮しつつ、2010年までに世界的に20の大規模なCCSの実証プロジェクトが開始されることを強く支持する」との文言が採択された。さらに、サミット終了直後には「低炭素社会づくり行動計画」が閣議決定され、その中で「早期に大規模実証に着手し、2020年までの実用化を目指す」「分離・回収コストを、2015年ごろにトン当たり2000円台、2020年代に1000円台に低減することを目指す」といった具体的な数値目標も示された。

 このような流れを受け、国内外で本格的なCCSの技術開発と実証試験が進められている。例えば三菱重工業は、2011年から米国アラバマ州で地元の電力会社(サザンカンパニー社)と共同で、石炭火力発電所の排ガスの中から、1日あたり500トン規模(年15万トン)のCO2分離・回収実証を行っている。2012年9月には、回収したCO2を12マイル先の地下3000~3400mにある帯水層に圧入・貯留する実証もスタートさせている(米エネルギー省(DOE)の温室効果ガス対策プロジェクト)。

 また、三井物産、IHI、電源開発の3社も、日豪官民共同プロジェクトとしてオーストラリアのクイーンズランドで、CO2分離・回収実証試験を行っている(現時点では圧入・貯留に関する実証は行われてはいない)。

 国内でも、東芝が福岡県大牟田市のパイロットプラントで、2009年からCO2の分離・回収の実証を進めている。また、日本各地でCO2の貯留に関するフィールド調査が進められている。例えば、茨城県勿来・いわき沖では2008年から貯留層の評価が行われていた。ただ、東日本大震災を受けて、同地点における調査は当面取りやめとなった。

 一方で、2009~2011年度にかけて北海道苫小牧沖でも地質調査が行われ、CO2を安定して封じ込めることができる地層が存在することが判明。2012年2月に苫小牧沖が国内のCCS実証試験地点として正式決定した。

 経済産業省の計画では、商業運転中の製油所(2カ所)で発生した排ガスからCO2を分離・回収。パイプラインやタンクローリーで圧入装置に輸送し、CO2を苫小牧沖の海底下、約1100~1200mと約2400~3000mの2カ所の地層(貯留層)に年間15万~25万トンの規模で閉じ込める。実証スケジュールは2012年からプラントの設計・建設に着手し、2015~2018年にかけて本格的に実証を行い、2020年の実用化を目指している。なお、CO2を貯留した地層に関しては「海洋汚染防止法」に基づき、実証試験終了後もモニタリングを続ける。

 2012年12月の環境省の発表によると、2011年度における日本の温室効果ガス排出量は約13億7000万トンであり、2010年度より約4%増加している。原子力発電所の停止に伴う火力発電の増加が主な原因と見られる。原子力発電所の代替として、火力発電所の新増設やリプレースが進む中で、今後も温室効果ガスの排出は予想以上に膨らむ可能性がある。国内外での実証試験の成果を受け、今後はCCS実用化への期待が高まるのではないだろうか。

CSSの仕組み(イメージ)
CSSの仕組み(イメージ)