「節電」と「省エネルギー」の二つの用語はよく似ており、その時々の雰囲気で使われていることもありそうだ。ここでは、その具体的な意味を考えてみることにする。ただし、省エネルギーの概念には、ガソリンの節約、ガスから電力への転換(もしくはその逆)なども含まれるのが一般的だが、ここでは電力の領域に限らせていただく。

 「節電」と「省エネルギー」の違いを一言で述べよと問われたら、「節電はkWの削減」、「省エネルギーはkWhの削減」と回答すれば、満点とまでいかないまでも、及第点程度は頂けよう。

 エアコンと照明を使用していて、かつ、プラグインハイブリッド車(PHEV)を車庫で充電しているシーンをイメージしてみよう。「節電」するには、(1)エアコンを停止する、(2)照明を消す、(3)PHEVの充電を停止する、などが考えられる。この中で、(1)と(2)は、「ピークカット」と呼ばれる方策の一つとなる。エアコンや照明はその時々で必要なものであり、“後で使う”ことでは必要な効果が得られないからである。一方、(3)のPHEVの充電は、いずれは時間帯をずらして充電することになるため、このような方策を「ピークシフト」と呼ぶ。

ピークカットとピークシフトの概念
ピークカットとピークシフトの概念

 その瞬間とか、1時間程度などの短い期間では、(1)(2)(3)とも、その電力需要(kW)が消滅し、節電効果が得られるのは同じだ。しかし、1日とか1週間のような比較的長い期間で眺めると、ピークカットは需要そのものが無くなってしまうのに対して、ピークシフトは時間的位置がずれただけで、需要としては相変わらず存在している。

 このように、(1)(2)(3)とも節電には変わりないが、(1)(2)はkWhまでも低減されるため、同時に省エネルギー策でもある。逆に、(3)はその時には節電に寄与したものの、別な時期に同じ量の電力量(kWh)が必要となるため、省エネルギーには寄与していないことになる。以上見てきたように、「節電」は、機器類をいつどのようにON/OFFるかという“使い方”に依存することが大きく、「省エネルギー」は、“機器固有の性能”に依存(上記例では、PHEVのバッテリー容量)することが多い。

 近年、電気機器の消費電力は小さくなってきている。このため、大雑把に言うと、「節電」は、機器の使い方を司るHEMSBEMSで実現し、「省エネルギー」は個々の機器類の省エネ性能で実現する、という構造が見えてくるだろう。