メリットオーダー(merit order)とは、様々な種類の発電所を発電コストの安い順に並べたものを指す。このときの発電コストとは、経済用語で言うところの「限界コスト」であり、主として火力発電所の燃料コストが相当する。

※発電量を一単位(1kWh)だけ増加させたときの増加費用。

 1日の中で刻々と変化する電力需要を満たすには、発電コストの安い発電所から順番に運転することが最も経済的であるため、電力会社は特別な理由がない限り、メリットオーダーによる発電を行う。実際のメリットオーダーの並びを見ると、まったく燃料費の掛からない水力発電や風力・太陽光・地熱発電が最初に置かれ、続いて原子力発電が来る。火力発電はその次であり、燃料種別や発電効率により細かな順序が決まるが、おおまかには石炭火力、ガス火力と続き、最後に重油火力の順番となる。

メリットオーダーの例
メリットオーダーの例

 国や地域によって存在する発電所のラインアップが異なるため、メリットオーダーも地域により構成が異なる。例えば、ドイツなどの再生可能エネルギーが普及している海外では、風力発電や太陽光発電などの限界コストゼロの発電所がメリットオーダーの先頭に多く入り込んだことにより、卸電力取引市場の平均価格が低下傾向にある。

 日本の電力システム改革議論において「広域メリットオーダー」という言葉をときどき見かけるが、これは地域間で電源をシェアすることで全体の経済性を高めようという考え方である。例えば、隣り合うA電力とB電力があり、A電力の発電所ラインアップだけでA電力エリア内の需要を満たすには、燃料費の高い重油火力を稼働させなければならない状況になったとしよう。このとき、隣のB電力でもっと安い発電所が余っていれば、A電力はB電力から電気を買ってくる方が限界コストは安くなり、A電力は高い重油火力を廃止することができるかも知れない。

 現在、卸電力取引所を通じた全国的な電力取引など、広域メリットオーダーを追求する動きが増えつつあるが、発電所利用のさらなる効率化のためには、もっと卸電力取引市場が活性になるべきという見解が経済産業省や電力システム改革専門委員から出されている。このような動きに加え、今後は電力会社の発電所だけではなく、自家用のコージェネ発電やネガワットなど、多彩なプレイヤがメリットオーダーに組み込まれていくことにも期待したい。