暖房や給湯のための熱を得るために太陽熱などの再生可能エネルギーを用いることを再生可能エネルギー熱利用と呼ぶ。1980年代にブームとなった太陽熱温水器が再生可能エネルギー熱利用の典型例である。再生可能エネルギー活用に積極的な欧州では、EU再生可能エネルギー指令に基づき、暖房用と冷房用における再生可能エネルギーの利用拡大が全加盟国に義務付けられている。国内でも、省エネルギー施策の一環として未利用熱の有効活用が促進されており、排熱と並んで再生可能エネルギー熱利用に対する関心が高まっている。

 再生可能エネルギー熱利用として、太陽熱利用、雪氷熱利用、地中熱利用、温度差熱利用、空気熱利用などがある。

再生可能エネルギー熱利用の種類
種類概要
太陽熱利用太陽の熱エネルギーを太陽集熱器に集め、水や空気などの熱媒体を暖めて給湯や冷暖房などに活用するシステム。機器の構成が単純なため、導入の歴史は古く実績も多い
雪氷熱利用北海道を中心に導入が進んでいる。冬の間に降った雪や、冷たい外気を使って凍らせた氷を保管し、冷熱が必要となる時季に利用する
温度差熱利用地下水、河川水、下水などの水源を熱源としたエネルギー。夏場は水温の方が気温よりも低く、冬場は水温の方が高い。この水の持つ熱をヒートポンプを用いて利用する
地中熱利用地中の温度は地下10~15mの深さになると、年間を通して温度の変化が見られなくなる。このため、夏場は外気温度よりも地中温度が低く、冬場は外気温度よりも地中温度が高いことから、この温度差を利用して効率的な冷暖房などを行う
空気熱ヒートポンプを利用することにより、空気から熱を吸収することによる温熱供給や、熱を捨てることによる冷熱供給ができる再生可能エネルギー源。空気熱を利用した設備としてヒートポンプ給湯器や空調用エアコンなどがある
出所:資源エネルギー庁ホームページより作成

 太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー発電が注目されることが多いが、再生可能エネルギー熱利用も日本各地で実用化されている。例えば、上述の太陽熱温水器は約65万件の累積設置実績を持ち※1、地中熱ヒートポンプも北海道や東北地方を中心に約1000件の累積設置実績を持つ※2。また、雪氷熱利用を行っている施設も全国で100を超え、冬季に降り積もった雪を夏まで保管して冷房用の冷熱源として利用するマンションなどが登場している。再生可能エネルギー熱利用の技術開発も進展している。例えば太陽熱温水器は、屋根に貯湯タンクの設置が必要となる自然循環式の太陽熱温水器に代わり、屋根に軽い集熱器を設置するだけで済む強制循環方式の太陽熱温水器が商用化されている。

※1 平成22年末実績(ソーラーシステム協会調べ)
※2 平成23年末実績(地中熱利用促進協議会調べ)