動画データや音声データなどのコンテンツを通信事業者のサービスによらずに提供すること。Over The Topの略。例えば、動画サービスは「OTTビデオ」と呼ばれる。スマートフォンやパソコンで使われている「comm」「LINE」などのサービスは「OTTボイス」である。

 通信サービスにおいて、ISDNや携帯電話などの従来型からインターネット(IP)型が標準的になってきたことが、OTTの普及を加速している。従来型通信サービスでは、データ伝送方式に加え、コンテンツのやり取りの方法が標準化され、音声やテレビ電話のサービスを通信事業者が提供していた。例えば携帯電話では、音声やテレビ電話のサービスは従来型だった。OTTでは、音声や動画のサービスまでIP型で提供される。

 OTTの普及は、通信事業者と関連企業との力関係に変化を及ぼしている。OTT化が進むと、通信事業者はサービス収入を減らす。代わりにOTTボイスやOTTビデオを提供する事業者が収益機会を得る。もちろん通信事業者自身がOTTの事業者になる場合もある。ただし、かつてサービス提供は通信事業者が独占していたが、いまや誰にでも開かれた。さらに、通信事業者はデータ伝送の高速化に投資し続けなければ同業との競争に勝てず、この面でも通信事業者を劣勢にしている。

 2010年代に入って、テレビや映画のコンテンツをベンチャー企業が専用ハードウエアとともに、通信事業者の頭越しに提供する事例が多くみられる(関連記事)。ただし、これはOTTの黎明期といえる2010年代の状況である。収益機会を利益に結び付けて、継続的な事業ができる有力候補は、コンテンツ所有者だ。今後、コンテンツ所有者と、そのデジタル配信技術・経験を持つ電機メーカー・通信事業者との一層の連携は必然ではないか、と記者は考える。