農業、漁業、林業など、自然界の成果物から富を得る産業が第1次産業。第1次産業の成果物を加工して富を得る製造業などが第2次産業。サービスや第1次産業と第2次産業の製品流通などを通して富を得るのが第3次産業である。「第6次産業」とは、第1次産業である農業を加工(第2次産業)や流通(第3次産業)まで行う産業形態のこと(関連情報)。第1次、第2次、第3次という分類を超えた事業形態は、IT・エレクトロニクス・機械業界でも行われている。

 IT・エレクトロニクス業界では、製造業を原点とする米Apple社やソニーがコンテンツ流通に乗り出し、ソフトウエア開発の米Google社や米Microsoft社がハードウエアを販売している。インターネットによる流通業の米Amazon.com社や楽天もハードウエアを販売中だ。自動車メーカーのディーラーは、利益を新車販売よりも整備・保守から多く得ている(関連記事)。農業は、生産者自身が販売に乗り出したことで事業的に成功した例がある。

 背景には、製造と流通へ参入しやすくなったことがある。製造では、EMS(electronics manufacturing service)や個人向け製造サービスと、3次元プリンタなど製造ツールの普及によって、製造装置への初期投資や製造ノウハウが不要になった。流通面では、インターネットの普及と仮想商店街の一般化で、消費者へのアクセスが簡単にできるようになっている。少なくとも第2次産業と第3次産業の相互参入と、第1次産業から第3次産業への参入における障壁は、以前に比べて大幅に下がった。

 第1次産業への参入障壁は依然として高い。法規制やノウハウの壁が残っている。一方、農業や漁業の工業化は進んでおり、工場化に向けた技術開発も進行中である。将来、例えばエレクトロニクス業界が、EMSを活用するように、農産物や漁獲物の生産を外注したり、工場を購入したりできるようになれば、そもそも「第n次産業」という分類に大きな意味がなくなる。