経済産業省の電力システム改革専門委員会などの場において、電力会社の「発電部門」と「送・配電部門」の事業を分ける発送電分離の議論が本格化している。

 そもそも日本では、一般電気事業者は発電所も送電網も配電網もすべて自社で持つ「発送電一貫」体制で電力小売り事業を行っている。これまでの電力制度改革で、発電市場への参入自由化や、電力小売りの部分自由化などが進められてきたが、新規参加者は比較的限定されている。

 そこで行政は発電事業や電力小売り事業への新規参入を促すために、一般電気事業者の送電網や配電網を利用しやすくする政策を打ち出そうとしている。具体的には、一般電気事業者に対して「送電網(配電網)は共通インフラとして第三者(新規参入者)にも開放すること」「第三者に提示する利用条件は自社(一般電気事業者)と同条件とすること」を義務付けるとともに、これを徹底するような規制をかけることとなる。

 これが「発送電分離」の肝である。このような義務付けを徹底しなければならない背景としては、一般電気事業者が発送電一貫体制を維持したままでは、自社都合を優先して送電網(配電網)を運用してしまうのではないか、との懸念が払拭できないという点が根底にある。

 ちなみに発送電分離に関しては、いくつかの形態があり、経済産業省の電力システム改革専門委員会は、以下の4類型に分類している。

 電力システム専門委員会では、今のところ「法的分離」と「機能分離」の二つが有力候補として議論が進められている。他方、委員の意見は割れており、ある委員は「法的分離は、法律の面でわかりやすく、制度設計もしやすい」とのメリットを主張し、ある委員は「機能分離は、電力の広域融通に適している」とのメリットを主張している。また、ある委員は「どちらの方法を選ぶにせよ、人事交流の禁止や採算の独立性を明確にすべきだ」と主張している。

 なお、東京電力では2013年4月を目途に社内カンパニー制を導入することが決定しており、同社がモデルケースとなる見込みだが、まだ未確定な部分も多い。