卸電気事業者とは、一般電気事業者に電気を供給するもののうち、その発電出力が合計200万kWを超える事業者を言う。電気事業法で定義された電気事業者の形態の一種であり、現在は「電源開発株式会社」と「日本原子力発電株式会社」の2社が相当する。端的には「大きな発電会社」と言える。その大きさゆえに、一般電気事業者が担う電力安定供給に与える影響も大きく、電気事業法上のさまざまな規制(供給義務など)が課せられている。

 電源開発株式会社(Jパワー)は、戦後復興に伴う電力需要不足を解消するために政府が出資して作った特殊法人が母体である。大規模な水力発電や石炭火力発電の開発と運転を担ってきた。2003年に民営化され、その後株式上場した。日本原子力発電株式会社は、原子力発電専業の卸電気事業者(株主構成は東京電力や関西電力をはじめとする電力各社とJパワー)である。日本初の商用原子力発電所を建設するなど、原子力のパイオニアとしての役割を担ってきた。

 いずれの卸電気事業者も、その名の通り「卸売り」のみを行っており、最終需要家に対する小売販売はやっていない。なお、一般電気事業者などに電気を卸売りする形態はほかにもあり、電気事業法で細かく区分されている。

電気を供給する事業の種類
事業の種類 説明 主な事業者



一般電気事業 一般(不特定多数)の需要に応じて電気を供給する事業。いわゆる電力会社 東京電力、関西電力、中部電力など
卸電気事業 一般電気事業者に電気を供給する事業のうち、発電出力の合計が200万kW超のもの Jパワー、日本原子力発電
特定電気事業 限定された区域の需要家に対して電気を供給する事業。自営送電線を利用する 六本木エネルギーサービス、JR東日本など
特定規模電気事業 契約電力50kW以上の需要家に対して電気を供給する事業。送電は一般電気事業者の託送サービスを利用する。いわゆる「新電力(PPS)」である エネット、JX日鉱日石エネルギー、サミットエナジー、F-Power、丸紅など


卸供給事業 一般電気事業者に電気を供給する事業のうち、供給契約10年以上かつ1000kW超、または供給契約5年以上かつ10万kW超のもの。いわゆるIPP(Independent Power Producer)である 鉄鋼会社、ガス会社、石油会社、公営電気事業者、共同火力会社など
特定供給事業 特定の需要家に対して電気を供給する事業。具体的には、資本関係などで密接な関係がある相手に電気を売る場合(許可が必要)、同一構内で電力を売る場合、一般電気事業者や新電力のために電力を供給する場合がある 自家発の余剰電力供給など

 現在、政府の電力システム改革専門委員会では、電力の小売全面自由化や発送電分離に加えて、卸電気事業規制の廃止も議論されている。今後の制度改正によっては、卸電気事業のあり方が大きく変わるかもしれない。

現在の電力システム概念図
[画像のクリックで拡大表示]