電極を兼ねたワイヤから溶接対象となる母材に向けてアーク(放電現象の1つ)を発生させることで、ワイヤと母材を溶かして溶接部とする接合法。大きくは、アーク溶接に分類される。母材にマイナス電圧、ワイヤにプラス電圧を印加することで、アークを発生。電極から溶接部に向かって吹き付けるシールドガスでアークや溶接部を覆うことにより、アークを安定化させ、溶融金属の中に大気中から大量の窒素が溶け込むのを防ぐ。

 シールドガスとして、アルゴン(Ar)やヘリウム(He)などの不活性ガス(inert gas)だけを使うのがMIG(Metal Inert Gas)溶接。不活性ガスに活性ガス(active gas)を混ぜたものをシールドガスとするのがMAG(Metal Active Gas)溶接。鋼板を対象とした通常のMAG溶接では、アルゴン(Ar)80質量%、二酸化炭素(CO2)20質量%のシールドガスを使う。

 シールドガスにCO2を混ぜるMAG溶接は、化学的にCO2と反応しやすい金属(アルミニウム合金、銅合金、チタン合金、ステンレスなど)には適用しにくく、通常は主に鉄系材料に使われる。一方、MIG溶接は、アルミニウム合金、銅合金、チタン合金、ステンレスなどにも使える。

 MIG溶接やMAG溶接の技術的な改良も進んでいる。例えば、神戸製鋼所とダイヘンは共同で、亜鉛めっき鋼板のMAG溶接において手直しを軽減する技術を開発済みだ。亜鉛めっき鋼板のMAG溶接では、溶接の熱で亜鉛が気化して、気孔欠陥やスパッタ(溶接時に飛散する金属粒)を発生させる。両社は、(1)シールドガスの成分比の適正化、(2)ワイヤの組成の見直し、(3)アークを発生させる電流波形の適正化、などによって気孔欠陥やスパッタの発生を低減した(図1)。

図1●溶接品質の従来法との比較
気孔欠陥やスパッタの発生を低減する亜鉛めっき鋼板のMAG溶接技術を、神戸製鋼所とダイヘンが共同で開発した。写真は、この新技術を用いた場合(上)と、従来法を用いた場合(下)の溶接品質の比較である。従来法では、ピット(溶接部の表面に生じる小さな孔)やスパッタの跡(母材表面に走った黒っぽい線)が多く見られるが、新技術ではピットはほとんどなく、スパッタの跡も大幅に減っている。