「部分供給」とは、1つの需要家に対して、2つの電力会社(例えば新電力と一般電気事業者)が電力の供給(小売り)を行うことである。よく似たケースで「常時バックアップ」という電力供給方法もある。その違いを確認しておこう。

新規参入者(新電力)による電力供給パターン
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 上図のように、「常時バックアップ」は、新電力が一般電気事業者から電気の一部卸売りを受けて、需要家に対して電気を全量供給する形態であるのに対し、「部分供給」とは、新電力と一般電気事業者が、それぞれに需要家と契約を締結して電気を供給する形態である。

 部分供給は、2000年3月からの電力の小売部分自由化(特別高圧の自由化)の開始を受けて、経済産業省と公正取引委員会が共同で作成した「適正な電力取引についての指針」(1999年12月公表、2011年9月に最新版に改訂)により認められている。同指針(「適正取引ガイドライン」とも呼ばれる)では公正かつ有効な競争の観点から、問題となる行為を具体的に例示している。例えば、需要家の部分供給の申し出を一般電気事業者が拒否したり、部分供給料金を不当に設定したりすると、電気事業法および独占禁止法上で問題とされる恐れが強い、として明示している。

 また経済産業省は、「電力自由化範囲において、部分供給は制度的には制限されていない」との見解を出している(2012年4月 第3回電力システム専門委員会より)。さらに2012年4月には経済産業省(資源エネルギー庁)が、「グリーン電力の部分供給について」としてホームページ上で、グリーン新電力(風力発電などのグリーン電力を小売供給している新電力のことをいう)と一般電気事業者による、グリーン電力の部分供給について、「電気事業法上の供給規制は設けられていない」との見解も出している。

 しかし、これまでのところ、国内で部分供給が実施された事例はわずか2件しかない。その一つは、2002年7月~2004年9月に、ある新電力と既存電力会社がスーパーマーケットに対して「部分供給」を実施したものである。そこでの需要家(スーパーマーケット)は電気料金が割安な方から電力を購入するとして、原則として昼間は新電力から、夜間は既存電力会社から購入していた(ちなみに、新電力の電力供給源は水力発電所であった)。もう1件は、2005年1月~2006年3月に実施されたが、こちらも今は終了している。つまり、現在は「部分供給」は実施されていない。

 なお、「部分供給」に関しては、代表的なパターンとして3方式がある。詳細は「2012年11月7日 第9回電力システム改革専門委員会資料」が参考になるだろう。