これは、新聞・雑誌などで良く見かける表現だが、“今さら聞けない”系の筆頭単語かもしれない。

 物理的に淡々と説明すれば、kWは、単位時間当たりのエネルギーを表すのに対し、kWhは、その時間的積分値、つまりある期間におけるエネルギーの総量を表す。単に、kWを電力、kWhを電力量とも言う。もちろん、k(キロ)は、1,000を表す補助単位である。

 例を挙げてみよう。消費“電力”100Wのテレビを3時間視聴する間に、少し寒かったので消費“電力”500Wの電気ストーブを2時間使用したと仮定しよう。この場合の、消費“電力量”は、以下のようになる。

  100[W]×3[時間]+500[W]×2[時間]=1,300[Wh]=1.3[kWh]

電気を水に置き換えてみると...
電気を水に置き換えてみると...

 大雑把ではあるが、この二つのキーワードを比べてみる。

●電球などの照明において、kWは明るさに関係し、kWhは電気代に関係する

●電気ストーブにおいて、kWは暖かさ・暖房の強さに関係し、kWhは電気代に関係する

●タービン発電機において、kWはタービンの大きさに関係し、kWhは使用した燃料の量に関係する

●蓄電池において、kWは同時に使用できる機器の数に関係し、kWhは使用可能時間に関係する

●電力取引の分野では、kWを取引する場と、kWhを取引する場がそれぞれ存在する機関もある(国内ではkWの取引場はない)

 さて、このkWhは実は栄養などでお馴染のカロリー[cal]と同じ意味(「ディメンション」という)を持つことはあまり認識されていないようだ。再び物理的な説明になってしまうが、ワット[W]は仕事率と呼ばれ、仕事量ジュール[J]を時間(秒、(s))で割ったものである。また、高校の物理で習ったように、ジュールとカロリーは定数をかけることで相互に変換できる。

  ワット[W]=ジュール[J]/秒[s]
  ジュール[J]=4.18×カロリー[cal]

 kWhは、ワット=J/sに[時間]=3,600[s]を乗じて、補助単位kにより表現したものであるから、ジュール、すなわりカロリーと同じ意味(デメンジョン)を表すのである。

 電気の多くは、石炭、石油、天然ガスの燃焼によって作られている。例えば、原油そのものは、1リットルあたり9,000[kcal]強のカロリーを有している。火力発電所の効率や送電線のロスなどを総合して、原油が有しているカロリーの4割程度を電気として取り出せると仮定すると、1[kWh]の電力量を得るには、ざっと250[ml]の原油が必要となる。100[W]の照明を10[時間]使用した際の消費電力量が1[kWh]であるので、その電気が原油由来とすると、およそ250[ml]の原油が消費された計算になる。

■更新履歴
より分かりやすくするために、記事本文に具体的な例などを追記しました。 [2012/12/17 14:30]