タッチ・パネルを液晶パネルの上に載せて使う従来方法に対して,タッチ・パネル機能を液晶パネルの中に一体化する方法の研究が盛んになっている。このタッチ・パネルと液晶パネルの一体化には,「インセル」と呼ばれる方法と,「オンセル」と呼ばれる方法がある。インセルは,タッチ・パネル機能を液晶の画素の中に組み込む方法である。一方,オンセルは,タッチ・パネル機能をカラー・フィルタ基板と偏光板の間に作り込む方法である。

オンセル方式の表面型静電容量式タッチ・パネル(NEC液晶テクノロジー)

 外付けだったタッチ・パネル部品を一体化できれば,薄型化,軽量化が可能になる。また,タッチ・パネルを液晶に外付けする従来方式では,液晶とタッチ・パネルの間の物理的な空間が存在していた。従って,液晶パネルの上面やタッチ・パネルの下面で外光などが反射してしまい,屋外などの明るい環境下での視認性が低下していた。外付けだったタッチ・パネル部品を一体化できれば,この屋外でのような視認性の低下を抑制できる。

 インセル技術の提案は以前からあったが,歩留まりや表示性能の確保が難しく,実用化が進まずにいた。この原因は,TFTアレイ基板上の画素内部にタッチ・センサ機能を組み込もうとしていたことである。このために,複雑な半導体製造プロセスを使うハメになり,歩留まりの足かせになっていた。また,画素内にタッチ・センサを組み込むことで,表示に利用できる面積が減ってしまい,画質劣化の要因にもなっていた。

 ところが,オンセル技術の登場によって,液晶とタッチ・パネルの一体化に転機が訪れた。カラー・フィルタ基板と偏光板の間に,簡単な透明電極パターンなどを形成するだけで済むため,歩留まりを確保しやすい。また,画素内の有効表示領域の面積も減らないため,画質劣化もほとんどない。

 オンセル方式のような液晶との一体化技術が普及すれば,外付けのタッチ・パネル部品は不要になっていく。タッチ・パネルを製造する担い手は,従来の外付けタッチ・パネルのメーカーから,液晶パネルやカラー・フィルタのメーカーにシフトしていく可能性が高い。機器メーカーがタッチ・パネル・メーカーから外付け部品を調達していたような,従来のサプライ・チェーンは一変することになるだろう。