音波方式タッチ・パネルは,タッチすることでディスプレイの表面に走る超音波やディスプレイ全体を伝わる板波を利用して,タッチ位置を検出する方式である。前者の超音波を利用する方式は超音波表面弾性波方式,後者の板波を利用する方式は音響波照合方式と呼ばれる。

2点入力を実現した超音波表面弾性波方式のタッチ・パネル(タッチパネル・システムズ)

 超音波表面弾性波方式タッチ・パネルは,ガラス製で,角部に超音波を発信する発信子と,超音波を受信する受信子がある。パネルの周辺部には,超音波を折り返すために斜め方向のギザギザを持つ「反射アレイ」が印刷で形成されている。発信子から発せられた超音波は,ガラスの表面を伝わって進み,反射アレイの斜めの線に当たって折り返す。さらに逆側の斜めのスリットに当たって折り返して,受信子まで戻る。これを各斜めの点で繰り返して,パネルの表面上にくまなく超音波を行き渡らせている。指でパネル上のどこかにタッチすると,その部分だけ超音波が吸収されて信号が弱くなる。超音波は,近い(短い)経路を通ったものほど発信してから受信するまでの時間が短く,すぐに帰ってくる。遠い経路を通った超音波は,戻るまでにある程度の時間がかかる。これを利用すれば,信号が弱くなるまでの時間からタッチしている位置を特定できる。

 音響波照合方式タッチ・パネルは,超音波表面弾性波方式と同様にガラス製である。ガラス素材そのものを,音波を伝達させる物質として使っている。パネルを指でタッチすると微弱な振動波が発生する。この振動波は同心円状に伝わっていき,パネルの周辺に配置した受信センサに届いた波形を分析することで,位置を割り出す仕組みになっている。地震の震源地を求める三角測量に似ているが,多少異なる。製造時に,パネルのどの位置をタッチするとどの波形の信号が届くのかというデータを,あらかじめパネルに実装しているメモリに保存しておく。使用時には受信した信号をメモリに保存されているデータと比較して,類似している波形の座標から位置を特定している。これにより,パネルとは関係ないところで発生した振動などのノイズとの区別を容易にした。