静電容量方式タッチ・パネルを搭載した米Apple Inc.の「iPhone」のヒットが契機となって,急速に市場が拡大している。2010年4月発売のタブレット端末「iPad」にも採用され,タッチ・パネル市場全体での存在感は一層高まっている。2010年には,静電容量方式タッチ・パネルの出荷金額が抵抗膜方式を上回る見通しである。この方式も多くのメーカーが参入しており,25を超えるメーカーが存在している。

10.1型の静電容量方式タッチ・パネルのデモ(Atmel社)

 静電容量方式には表面型と投影型があるが,スマートフォンやタブレット端末に搭載されているタッチ・パネルは投影型である。投影型静電容量方式は、X方向とY方向にグリッド状に電極を作製する。人が指でタッチすると,グリッドの間にかかっていた容量が変化する。それをコントローラICで認識し,容量変化が起きた場所を特定する。

 投影型静電容量方式は,画面サイズが4~5型を超えるとコストがあまりにも高くなってしまうため,「大型パネル対応は難しい」と言われていた。しかし,この常識は覆りつつある。静電容量方式の大型化対応は各社一斉に進めており,従来の携帯電話機だけでなくパソコンなどにも市場領域を広げようとしている。

 例えば,米3M Co.は静電容量方式のタッチ・パネルを搭載した22型の液晶モニターを,AV機器の展示会「InfoComm2010」に出展した。20点を同時に検知できる。静電容量方式用の検出ICを3個搭載しているという。米Atmel Corp.は,最大15型まで対応できる静電容量方式タッチ・パネル用コントローラIC(制御IC)の量産を,2010年6月末に開始した。日立ハイテクノロジーズは,既に7型以上のディスプレイに対応するコントローラICを販売中であり,2010年内には8.9型まで対応したコントローラ ICを販売する計画である。日立ハイテクが販売する台湾FocalTech Systems Co., Ltd.製のコントローラICの特徴は,静電容量型の中でもマルチタッチの検出精度や反応速度の点で有利な相互容量方式と呼ばれる検出手法を採用した点にある。1個のコントローラICで8.9型まで対応できるという。