液晶セルは,前段のTFTアレイ工程によってTFTアレイが作り込まれたガラス基板と,カラー表示するためのカラー・フィルタ基板を張り合わせ,その間に液晶材料を封入したものである。この液晶セルを製造する液晶セル工程では,液晶分子の向きをそろえるための配向膜をTFTアレイ基板やカラー・フィルタ基板に塗布し,さらに配向処理をする。その後,これら2枚の基板を張り合わせ,液晶材料を封入する。

この液晶セル工程は,アレイ工程と同様に生産性向上に対する要求が強い。そこで,コスト低減のための技術革新が進んできた。その中でこれまで最も生産性向上に寄与したのが液晶滴下・張り合わせ技術である。液晶滴下・張り合わせ技術は,2000年代前半に,第5世代以降の大型基板ラインで導入が進んだ。それまでの真空注入法では20型の液晶セルに30時間かかっていた液晶材料の封入を,わずか1時間半で済ませることができるようになった。現在では,大型テレビ用液晶パネルの生産に欠かせない技術となっている。

液晶セル工程
テック・アンド・ビズのデータ。
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 また,液晶セル工程はTFTアレイ工程と同様に,液晶パネルの表示性能を左右する重要な工程でもある。ここへ来て,さらなる表示品質向上のための革新的な配向技術の導入が進んでいる。液晶分子の方向を精密に制御できる光配向技術である。シャープが2009年下期に導入した。現在のテレビ向け液晶パネルの主流であるVAモードで液晶分子の配向を制御するために必要だったスリットや突起(リブ)が不要になるため,開口率やコントラストが向上し,応答も速くなる。また,生産工程の大幅な削減も可能になる。

 液晶モジュール工程は,液晶セルの表示領域の外側に液晶駆動用のドライバICや,光源としてのバックライト・ユニットを付ける工程である。

 ドライバICの実装には主に,TAB(tape automated bonding),COG(chip on glass),COF(chip on film)という三つの方式がある。TABは,ポリイミド樹脂などフレキシブルなテープを素材とした配線基板上にドライバICをボンディング接続で搭載したTCP(tape carrier package)を使う方式である。COGは,液晶パネルのガラス基板にドライバICを直接実装する方式である。COFは,テープよりも薄いフレキシブル・フィルム上に直接ドライバICを搭載する方法である。ノート・パソコン向けなどを中心に1995年ごろまではTAB方式が主流だったが,画素ピッチの縮小に伴って1995年以降はCOG方式が使われるようになっている。また,2000年以降,COG方式に加えてCOF方式が使われ始めてきている。

 バックライト組み立ては,中国において技術力向上が喫緊の課題として浮上してきた。液晶モジュール工場は,セットの組み立て工場の近くに置かれることが多く,中国にも相次いで建設されている。ただ,中国は液晶セルにバックライトを搭載する技術力が弱いと言われており,この課題を克服することが中国のLEDバックライト液晶テレビ産業発展のカギを握っている。