現行の液晶パネルのほとんどは,カラー・フィルタを用いてカラー表示を実現する。縦糸と横糸が異なる色の織物と同様に,小さな点や線を並べることによる加法混色により,カラー表示に対応する。R(赤),G(緑),B(青)の3色のサブピクセルで1画素を構成したものがほとんどであり,3色が混ざると白色になる。離れて見ると混色して見えるが,拡大すると小さな色の点(網点)が見える。このほか,RGBの3色の光源を順次駆動させるフィールド・シーケンシャル方式の実用化が始まっている。

 RGBのサブピクセルの配列方法には,「ストライプ配列」,「モザイク配列」,「デルタ配列」などがある。ストライプ配列はRGBを縦ストライプ状に配列したものである。大型カラー液晶パネルや,線,図形,文字の表示が多いパソコンやモニターなど高精細ディスプレイに採用されている。モザイク配列はRGBの同一色を斜めに配置したものだ。第1列がRGBRGBなら,第2列はBRGBRGとなる。ストライプ配列より自然な画像が得られるのが特徴である。デルタ配列はRGBを三角形に配列したもの。各ドットがフィールドごとに半ピッチずれる。縦・横・斜め方向にRGBがあるので,自然な画像表示が得られる。ビュー・ファインダーなどに採用されている。0.44型の多結晶Si-TFT液晶パネルなどが商品化されている。

 液晶パネルでカラー表示するためには,カラー・フィルタは重要な部品の一つである。ディスプレイとしてのカラー表示品質や明るさを決めるからである。このため分光透過率や色調などの色表示性能は重要である。同時に耐熱性や耐光性,耐薬品性,寸法安定性,平滑性などの各特性,さらには低コスト化が求められる。

 反射型の液晶パネルでは入射光がカラー・フィルタを2回通過することになるため,透過率が重要な指標になる。また半透過型の液晶パネルでは,外光による反射時とバックライトによる透過光とで違いのないように,1画素の中でもフィルタの形状や膜厚を変えている。

 カラー・フィルタの構成を示す。透明なガラス基板上に,RGBの3原色のほか,光遮断用のブラック・マトリクス,保護膜,共通透明電極(ITO)などで構成する。

 カラー・フィルタには,染料系(染色,染料分散,印刷)と顔料系(顔料分散,電着,印刷,転写,蒸着)がある。 かつては色が鮮やかな染料系が使われていたが,最近では耐熱性の高い顔料系がほとんどである。このほか,多層干渉膜方式などが研究開発されている。

 カラー・フィルタの低コスト化に向けて,現在,大きな二つの動きが活発化している。一つは,生産効率を向上する方向である。 パネル工場内にカラー・フィルタの生産ラインを敷くことによって,流通コストなどを省く。もう一つは,カラー・フィルタの作り方をガラリと変える方向である。インクジェット方式などの採用が進んでいる。