青色LEDの開発者である米University of California SantaBarbara校(UCSB)教授の中村修二氏が日亜化学工業在籍時に発明した特許の「相当の対価」をめぐり,2001年8月23日から2005年1月11日まで同社との間で約3年5カ月にわたって繰り広げた訴訟のこと。2005年1月11日に和解という形で決着した。

 中村裁判で中村氏は,「技術者の地位向上」を掲げて戦ってきた。同氏は,GaN系発光素子の特許(特許第2628404号,以下404特許)の特許権が同氏にあることを認めるように求めていた。1審の東京地方裁判所で争った404特許では相当の対価が約604億円と判断されたのに対して,控訴審の和解では中村氏が日亜化学工業在籍時に発明した特許などをすべて含めて約6億円(遅延利息金を除く)と大きく減額した。これを受け,テレビや新聞をはじめとする報道機関の多くは,減額の幅があまりに大きかったことや,同氏が実際に特許にどれだけ関与したかの判断が不明確なまま終わったことは遺憾である,といった論調だった。その一方で,中村氏の行動をたたえる意見も見受けられた。中村裁判が始まってから技術者の処遇に関して社会の注目度が高まり,日亜化学工業以外の企業においても相当の対価の支払いをめぐる元従業員との訴訟が頻発し,特許の報奨制度を見直す企業が相次ぐばかりか相当の対価を規定する特許法第35条が改正されるに至った。

 日経エレクトロニクス誌は,中村裁判を身近な問題として見守っていた多くの技術者を対象に,和解直後にアンケート調査を実施し,中村裁判の影響や技術者から見た特許の位置付けの変化などを聞いた。中村裁判に「意味があった」とする意見が89%を占め,発明における技術者の貢献度は「5%~20%の範囲にあるべき」との意見が最も多かった。また,「日本は今後,知的財産(知財)立国になれない」とする意見が52%に上るなど,特許にまつわる課題がまだまだ山積していることも浮き彫りになった。

日本は「知財立国になれない」が過半数
日本は「知財立国になれない」が過半数
調査の回答者は1181人。日経エレクトロニクスのニュース配信サービスを通じて,2005年1月14日~18日にWWWサイト「Tech-On!」で回答を集めた。