光源の効率を評価する指標であり,光源に投入する電力(W)に対する光源から発する光束(lm)で表す。単位はlm/Wである。
最近の白色LEDの発光効率は100lm/Wを超えている。白熱電球,蛍光灯に続く次世代光源として期待されてきた白色LEDでは,直管型蛍光灯の総合効率と同等の100lm/Wに達するかどうかに注目が集まっていた。なお,発光効率は光源の効率のみを表しており,光源を照明器具に取り付けた状態での器具全体の効率(総合効率)とは異なる。
発光効率は,外部量子効率を視感度(光に対する人間の目の感度)で示した数値である。外部量子効率とは,LEDに流す電子の個数(電流)に対して,LEDチップやパッケージ外に出てくる光子の個数を割合で示したもの。青色LEDチップと蛍光体を組み合わせた白色LEDにおいて外部量子効率は,内部量子効率(LEDチップに流す電子の個数(電流)に対して,LEDチップの発光層内で発生する光子の個数の割合),チップの光取り出し効率(発生した光がLEDチップの外へ出る割合のこと),蛍光体の変換効率(チップから出た光が蛍光体に当たって異なる波長へ変換される割合のこと),パッケージの光取り出し効率(LEDや蛍光体からの光がパッケージの外へ出る割合のこと)の掛け算で決まる。
発光層で発生する光子の一部はLEDチップ内で吸収されたり,あるいはLEDチップ内で反射され続けたりするため,LEDチップ外に出てこない。このため,外部量子効率は内部量子効率よりも低くなる。発光効率100lm/Wの白色LEDの場合,投入した電力の32%しか光エネルギーとして外部に出力されない。残りの68%は熱エネルギーに変わってしまう。
今後3年間で100lm/W向上
発光効率は,2003年ごろまでは1年に数lm/Wずつとゆっくり向上してきた。発光効率の向上では,蛍光体やパッケージに変更を加えるのではなく,チップ技術の改良に注力していた。具体的には青色LEDチップに使うGaN系半導体結晶を形成するMOCVDでの結晶成長技術を改善するといった地道な工夫が多かった。
その後,2004年からは向上ペースが1年に10~20lm/Wに高まった。これにより,2004年の50lm/Wから2008年の100lm/Wへと,4年間で50lm/W向上した。このような発光効率の向上ペースを実現するため,成膜技術の工夫に絞っていたチップ技術の改善を,LED製造プロセス全体に広げるように大きく見直すようにした。さらに,チップ技術の工夫に加え,蛍光体の改善にも取り組み始めた。
今後,LED各社は2008年に100lm/Wに達した発光効率を,2010年には140~170lm,2011年には150~200lm/Wに高めていく。すなわち,発光効率で新興のLEDメーカーに先行していこうとする実績のあるLEDメーカーは,平均で1年に30lm/W強,3年間で100lm/Wの向上を目指す。発光効率の上限が250lm/W程度といわれている中で,LED各社はその限界にどこまで近づけるかに挑戦する。
この限界に挑戦するため,LEDメーカーは最新のチップ技術,蛍光体技術,パッケージ技術を総動員する。チップ技術では,従来に引き続いて内部量子効率と光取り出し効率を向上する。蛍光体では,変換効率の向上に加え,蛍光体での乱反射による減衰の抑制に取り組む。新たに導入するパッケージ技術では,材料や構造を改善して光取り出し効率を高めていく。
このようにチップ,蛍光体,パッケージの各種技術を同時に投入することにより,従来トレンドを上回るペースで発光効率を向上させ,照明向け市場の立ち上げ前倒しとバックライト向け市場の急拡大に対応する。