波長が異なる複数の光を重ね合わせて白色の光を出力するダイオードのこと。液晶パネルのバックライト光源や照明光源,イルミネーションやインジケーターの光源,自動車のヘッドランプ光源など,応用範囲は広い。消費電力が低く,かつ寿命が長いことから,蛍光管や白熱電球を代替する,次世代光源として期待されている。白色LEDの中で,赤色の色味を強めて白熱電球と似た発光色にした品種を電球色LEDと呼ぶ。

  液晶パネルのバックライト光源としては,カラー表示する携帯電話機の液晶パネルのほとんどで白色LEDを用いるほか,より画面寸法が大きな液晶パネルのバックライト光源として需要が広がっている。例えば,白色LEDをバックライト光源に使うノート・パソコンは,モバイル用途では2010年にほとんどの機種が白色LED化し,14型以上の液晶パネルを使う機種では2010年末までに80%近くが白色LED採用品になるとみられている。最近では液晶テレビのバックライト光源に白色LEDを採用する品種が増えており,薄型化かつ低消費電力化の切り札として期待が集まる。韓国Samsung ElectronicsCo., Ltd.や韓国LG Electronics Inc.,ソニー,シャープなどの大手液晶テレビ・メーカーが主力製品に白色LEDを用いている。

  液晶パネルのバックライト用途とともに今注目を集めているのが,照明向けの白色LEDである。2009年に多くのメーカーが市場投入したLED電球は,白色LEDを搭載している。従来の白色LEDは,蛍光灯搭載品を中心とした照明機器市場を切り崩すには性能不足だった。発光効率が低いために消費電力が大きくなる上,1個から得られる光束が少ないので照明機器が巨大になっていたからだ。このため白色LEDメーカーは,携帯電話機のバックライト光源などに向ける小出力品の開発を先行させてきた。

  だが2008~2009年ころから,発光効率が80lm/W超や100lm/Wを超える白色LEDが続々と登場し,実用時における光の利用効率が一部の蛍光灯を逆転した。これにより,照明向け白色LEDの実用可能性が一気に高まった。LEDメーカーやLED照明の業界団体は,今後も高出力品の発光効率が著しく向上していく開発ロードマップを描いている。

  明るさ当たりの単価は年々安くなってきた。例えば光束1lmを得るための光源の値段を蛍光灯と比較すると,2005年の段階でも白色LEDは約100倍も高かったが,LEDメーカーの生産設備の拡充や歩留まりの向上によって,明るさ当たりの単価で蛍光灯の2倍以内に収まるようになった。

ますます効率が高まる白色LED
ますます効率が高まる白色LED
日亜化学工業における量産品の白色LEDの発光効率の推移。パルス発光の製品を含む。同社のデータを基に本誌が作成。

青色LEDなどと蛍光体材料を組み合わせる

 白色光の作り方には大きく分けて3種類ある。一つは,青色LEDチップの光を蛍光体材料に当てて,白色光を得るもの。もう一つは,近紫外LEDチップが出す光を複数の蛍光体材料に当てて混色するもの。最後の一つは,赤色(R),緑色(G),青色(B)の各LEDを同時に
光らせ,混色するものである。

  このうち主流は,青色LEDチップを利用する白色LEDである。蛍光体材料には,黄色蛍光体を使うもの,黄色蛍光体に赤色蛍光体を加えたもの,緑色蛍光体と赤色蛍光体を組み合わせたものなどを使う。例えば黄色蛍光体を使う場合,青色光の一部が蛍光体に当たって黄色の光を出力し,青色と黄色の混色で白色光を作り出す。この場合,赤色の光が弱いため疑似的な白色光となり,色温度も高いために青白い光(色温度が高い光)になる。この課題は,赤色蛍光体を利用することで軽減できる。さらに赤色蛍光体の発光をより強めると,白熱電球に近い光となる(電球色LED)。なお,近紫外LEDチップを利用する白色LEDは,発光スペクトルが自然光に近づけやすいとされる。