ガラスとSi基板の研磨面を重ねて加熱しながら電圧をかけると,共有結合による強い接合ができる。

 Si基板を結晶異方性エッチングした後,陽極接合という技術でガラスに張り合わせて立体的な構造を作ることができる(図1)。

図1 陽極接合
図1 陽極接合

 陽極接合は,1960年代に米国のバッテリ会社のMallory社で偶然見つかった方法で,最初はMallory法と呼ばれていた。ガラスとSiの研磨面を重ねて400℃ぐらいに温め,ガラスに500V程度のマイナスの電圧をかけると,静電引力が働き界面で共有結合が起きるという現象である。

 ガラスの中にはNa+のようなアルカリ・イオンが入っており,ガラスの中である程度自由に動くことができる。一方,ガラスのネットワークを作っているSiO2のどこかに欠陥があると,そこはSiOという電荷を持ち,アルカリ・イオンと対になって電気的に中性を保っている。

 高温にしてNaイオンが動きやすい条件で,マイナスの電圧をガラス側にかけると,Naイオンが引っ張られて移動する(図2)。ガラスとSiの接合面では,Si側にはプラスの電荷が集まった層が,ガラス側にはSiOの空間電荷層(Naイオンが欠乏した層)が形成される。

図2 Siとガラスの陽極接合のメカニズム
図2 Siとガラスの陽極接合のメカニズム

 もしこのSiOが可動イオンだったら,陽極接合は起きない。界面で電気化学反応が起きてしまうだけである。先に述べたように, SiOはガラスの構造体そのものであって,動かない。そのため,界面で静電気引力が発生して,共有結合が起きるのである。ちなみに,Naイオンは電極側に運ばれてきて,水酸化ナトリウムとして析出する。

 陽極接合時の電流の時間変化を,図2の右に示した。Naイオンが動くとき,つまり接合面に空間電荷層が形成される間だけ電流が流れる。これを変位電流という。電流は次第に下がってきて,流れなくなったところで接合が完了する。この電流の変化を見ていれば,接合の終了が分かる。また,ガラス・ウエーハでは,陽極接合部分の色が黒く変わるので,すぐに分かる(図3)。

図3 陽極接合で製作した加速度センサー
図3 陽極接合で製作した加速度センサー