フッ硝酸を酢酸で希釈したエッチング液を使うと,Siの等方性エッチングができる。

 ウエット・プロセスでSiを等方性エッチングするときには,フッ酸(HF)と硝酸(HNO3)を混ぜたフッ硝酸を,酢酸で希釈したエッチング液を使う。フッ酸の配合比が高いエッチング液を使うと,角がとがってエッチングされる。反対に硝酸の比率が高いと,角が丸く平らになる(図1)。

図1 Siの等方性エッチングと化学反応式
図1 Siの等方性エッチングと化学反応式
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 硝酸は水や亜硝酸(HNO2)と反応して亜硝酸とホール(h+)を発生し,このホールがSiを酸化する。酸化されたSiO2がフッ酸によって溶解する。フッ酸が多く硝酸が少ないと,最初の硝酸からホールができる反応が律速になる。

 くぼみの部分は反応で生成した亜硝酸が滞留してより一層反応を進ませるため,凹凸が強調され角がとがってエッチングされる。逆に硝酸が多いと,フッ酸が到達しやすい角の部分は速く溶解するが,くぼみの部分は亜硝酸が滞留して溶解が進まない。このため,角の丸い平坦な形になる。

 こうしたウエット・エッチングの反応は,コントロールしにくい。エッチング液を十分多くして,反応が進んでも濃度があまり変わらないようにするなどの工夫が必要だ。