電磁波の波長より小さな「単位素子」という小さなブロックを並べて擬似的に均一な媒質としたもの。電磁場の性質を決める誘電率と透磁率の値を,従来の材料よりも大きな自由度で設計できるという特徴を持つ。単位素子の設計や並べ方次第で自然界にはない特異な性質を生み出す可能性があるとして,注目を集めている。例えば,誘電率と透磁率の値がともに負である媒質が得られることが分かっている。こうした媒質は,電界,磁界,電磁波の進行方向の関係を左手の三つの指で示せるので,「左手系メタマテリアル」と呼ぶ。

 主にアナログ回路の設計技術として,アンテナやカプラなどに応用されることが多い。周波数が10GHz以下のマイクロ波向けに適用する場合,単位セルの寸法は数mm以下であればよいため,製造は比較的容易である。

 メタマテリアルの設計は自由度が高い分,最適解を求めて計算によって試行錯誤を繰り返すと解が収束するのに膨大な時間がかかるという課題がある。最近の高性能コンピュータの高速化や効率的な計算手法の開発が,メタマテリアルの開発を加速させる要因になっている。