自発光素子である有機ELを光源に用いた照明のこと。以前から研究開発は進められてきたが,ここにきて輝度や寿命といった特性が照明に使える水準に達し,有機EL照明の現実味が高まっている。

 有機EL照明には,従来の照明にない特徴がいくつかある。「面発光」「透明」「薄型・軽量」にすることが可能という点である。

 面発光であることから,壁や天井全体を発光させる壁照明を比較的容易に実現できる見込みである。面発光は蛍光灯などが備える特徴で,導光板などの光学部品を利用すればLEDでも実現可能だ。ただし,有機EL照明では光源自体が面発光し,しかもその形状に制約がない。薄型を保ったまま発光面を数十cm~1m角以上と,大幅に拡大できる可能性もある。

 透明にできるという点に注目しているのは欧州のメーカーが多い。透明にできるということは,単に装飾性を高められるというだけでなく,生活環境にあるガラスやプラスチックがそのまま照明器具になる可能性があることを意味する。フロントライトとして利用すれば,周囲が暗いと表示面が読みにくくなる電子ペーパーの欠点を補うことができる。

 薄型・軽量という特徴も,既存の照明に対する大きな優位点である。有機EL照明の発光部自体の厚さは1μmに満たず,基板と合わせても厚さ1mmをはるかに下回る。フレキシブルな基板上に有機EL照明を作製して紙のように丸められる携帯型照明なども実現可能とみられている。このほかにも,水銀を使わないこと,紫外線が出ないこと,反射板などの器具を利用しないことなど,いくつも優位点がある。