MEMSセンサは,半導体の微細加工技術を応用して作る。成膜,露光,エッチングといった技術を使い,化学反応や熱処理を利用して作る。従来のセンサと比較して欠点が少なく,扱いやすさと,特性面の潜在能力の高さを同時に備える。

 MEMSセンサは半導体素子と同じく,一般に寸法を小さくすると感度や精度が向上する。半導体プロセスで作るので,従来のセンサでは困難だった,電子回路との1チップ化が可能である。こうするとセンサ素子と,取り込んだ信号を処理する電子回路を1チップ化し,両者をつなぐ配線を短くすることによって雑音の混入を防げる。特性の違うセンサ素子を複数組み合わせて,検出範囲を広げたり,大量のセンサをアレイ状に並べて分布に関する情報を取り込んだりする用途も比較的簡単に実現できる。

 現在,MEMSセンサは民生機器での応用が急拡大している。例えば,加速度センサが任天堂のゲーム機「Wii」のコントローラに,角速度センサ(ジャイロ・センサ)がデジタル・カメラの手振れ補正に,Siマイクがノート・パソコンにそれぞれ応用されている。
 
 現時点ではまだ,力学的な情報を取り込む製品が中心である。次世代の用途として,ガス・センサや生物センサなどが研究開発の段階にあり,検出対象が拡大しつつある。