電源コードなどを介さず,ワイヤレスで電力を機器に供給する技術。「非接触充電」や「ワイヤレス充電」,ワイヤレス電力伝送などとも呼ばれている。

 現時点で登場してきたワイヤレスによる電力供給技術はその電力伝送の原理で3種類に大別できる(図)。まず,多くの携帯端末に採用が広がりつつある非接触充電技術には「電磁誘導」が用いられている。これは二つのコイルを近接させて一方のコイルに電流を流すと,発生する磁束を媒介にもう一方のコイルにも起電力が生まれる現象である。

 また,実用化が近いもう一つの技術の原理は,電波のエネルギーをアンテナで送受信できることををそのまま利用する。増幅回路などを用いずに電波の交流波形を整流回路で直流に変換して利用する。

 第3の原理は,電磁場の共鳴を利用する方法である。共鳴技術自体はエレクトロニクスではありふれているが,ここでは電磁波や電流ではなく,電場だけ,磁場だけを利用する。2006年11月に米Massachusetts Institute of Technology(MIT),Physics Department,Assistant ProfessorのMarin Soljai氏のグループが,世界で初めて電力供給技術としての利用可能性を発表した。

図 ワイヤレス電力供給技術の三つの基本原理
図 ワイヤレス電力供給技術の三つの基本原理 (日経エレクトロニクス2007年3月26日号より抜粋)