A-D変換器の一種。各ケタの判定用に1ビット~1.5ビットといった低分解能のA-D変換回路を多段用意してパイプライン動作で行うことで,1クロックで複数の処理を進める。パイプラインの各ステージには,D-A変換器とサブADC(比較器)が集積されている(図)。

 パイプライン型A-D変換器では,各段で入力レベルの位置を判定する。「1」の場合はその分だけ入力レベルを差し引いた後で増幅(1ビットの場合は2倍)し,次段で次のケタの値を判定する。このため常に演算増幅が必要になる。この演算増幅の精度が悪いと,後段のA-D変換の精度が悪化するため,オペアンプと負帰還回路を用いて精度を高めている。例えばサンプル・ホールド回路と第1ステージのD-A変換器で構成される初段は,10ビット分解能であれば出力電圧の誤差の許容値が1/210以下と非常に厳しい値が求められる。

図 パイプライン型の構成
図 パイプライン型の構成(日経エレクトロニクス2006年11月6日号より抜粋)