「CTF:Charge Trap Flash」と呼ぶ新構造のNAND型フラッシュ・メモリーが注目を集めている(図1)。既存の浮遊ゲート構造に置き換わるNAND型の新構造として,韓国Samsung Electronics Co., Ltd.が実現したためである。32GビットのCTF構造のNAND型を2006年9月に開発した。CTFの導入によって,同社はNAND型の微細化を20nm世代まで持続し,容量を256Gビットまで高められるとする。

メタル・ゲートやhigh-k絶縁膜を導入

 CTFのセル材料は,メタル・ゲートや高誘電率(high-k)絶縁膜を導入した「TANOS(TaN-AlO-Nitride-Oxide-Silicon)」を使う(図1(b))。Samsungはここ数年間,CTFを浮遊ゲートの後継に位置付け,既存のNAND型と同じペースで大容量化するために多値化技術の開発に注力してきた。

 CTFの特徴は二つある。第1に,浮遊ゲートに比べて微細化しやすい。SiN膜に電荷を蓄えるために,隣接セル間の干渉が生じにくいことによる。第2に,既存のNAND型の周辺回路を変えずに済む。データ書き込みと消去に浮遊ゲートと同じファウラー・ノルドハイム(FN)トンネリング方式を採用し,印加電圧も同等にできるためである。これに対し,CTFと同様にSiN膜に電荷を蓄積する米Spansion Inc.の「MirrorBit」は,多値化せずに多ビット化できるホット・エレクトロン注入方式を取る。

 Samsungは,浮遊ゲート構造をCTF構造へ全面的に切り替えるための試金石として,40nm世代でCTF構造に移行すると見られる。今後は「CTFの量産性を評価する段階へ移る」(同社)という。(大下 淳一)

NAND型フラッシュ・メモリーの「微細化の壁」を新構造のセルで乗り越える
図1 NAND型フラッシュ・メモリーの「微細化の壁」を新構造のセルで乗り越える
(a)「CTF」の導入によって,NAND型の2倍/年の容量増大ペースを40nm世代以降も維持する。(b)CTFは,浮遊ゲート構造のセルの微細化に伴う問題を解消する。本誌2006年4月号のpp.42-49を参照。韓国Samsung Electronics Co., Ltd.のデータを基に本誌が作成。