現在策定中のデジタル家電機器などを対象にするDRM規格の一つ。ソニー,松下電器産業,韓国Samsung Electronics社,オランダRoyal Philips Electronics社,米Intertrust Technologies Corp.などが参加している(米Marlin Developer Community(MDC))が仕様の検討などを進めている。Marlinは,ブロードバンドか放送かといった配信手段の手法を問わず,入手したコンテンツはDRMで記述された再生条件に従う形で,異なる端末間で交換して楽しめるようにしようというもの。米Coral Consortium Corp.が策定する「Coral」を組み合わせるなどして,異なるDRM規格との互換性の確保も目指している。

 Marlinで利用される基本技術の一つが,規格を主導している米Intertrust Technologies社が開発した「Octopus」と呼ぶDRM技術である。端末ではなくユーザーにコンテンツ利用の権利を与えて,ユーザーが所有する各種機器で再生を可能とするというのが基本的なコンセプトである。これを実現するために,ノード(端末,ドメイン,ユーザーなど)と,それらの関係を示すリンクという考えを導入した。ここでは,該当端末からユーザー・ノードまで,リンクでさかのぼっていくことができる場合に,端末はそのコンテンツを扱う権利があると判断する。

 コンテンツには,暗号化されたコンテンツとは別に,その解読用の鍵,さらにはコンテンツの再生条件などを記述したコントロール・プログラムが提供される。ユーザーがある端末でコンテンツを利用しようとした場合,端末に搭載したOctopusエンジンに搭載するバーチャル・マシン上でコントロール・プログラムを実行する。

 MDCは2006年5月,放送および,ブロードバンドによる配信型のコンテンツ配信を対象にしたDRM技術の仕様を公開した。2006年7月にはパソコンへの実装を目指してWindows OS対応のSDK(software development kit)をIntertrust社が出荷した。組み込み機器に向けた複数のプラットフォーム向けの開発も進めている。また,暗号鍵の管理やライセンス・プログラムの策定および発行など,DRMの運用に欠かせない役割を担う団体「Marlin Trust Management Organization(MTMO)」を設立する計画である。

図 ノードとリンクを導入
図 ノードとリンクを導入(日経エレクトロニクス2006年7月3日号より抜粋)