アルミニウムの窒化物。バンドギャップが6.0eVと大きいことから,半導体に用いれば理論的には波長の短い紫外LEDやレーザ素子が得られる。研究開発段階では,AlN結晶を半導体として用いた発光ダイオード(LED)の制作例があり,波長210nmの短波長の発光が確認されている。従来の紫外LEDの開発は,最も開発が進んだGaNを基にしたLEDの発光層に,Alを加えるなどしてバンドギャップを大きくし,発光波長を短くする手法を用いていた。純度の高いAlN結晶でLEDを形成する技術を確立できれば,従来とは逆にGaを発光層に加えていくことで,任意の波長の紫外LEDを比較的容易に作製できる可能性がある。

 AlNはBAWフィルタの圧電膜としても利用されている。AlNを圧電膜としてMoなどの電極層で挟み込み,共振器を構成する。こうしたフィルタはRFトランシーバIC上に搭載するフィルタとして,一部で実用化されている。

 従来,AlNは絶縁性が高く熱伝導率が高い「窒化物セラミックス」として,ヒート・シンクなどに使うことがほとんどだった。絶縁性樹脂の熱伝導性を高めるために,充填剤(フィラー)として用いる場合もある。SiC基板上にGaN結晶をエピタキシャル成長させる際の中間層材料としても一般的である。AlN結晶の層の上にGaN結晶を形成する方が,SiC上に直接形成するより結晶欠陥の少ないGaN結晶が得られる。