デジタル民生機器へのLinuxの適用を推進する非営利団体である米Consumer Electronics Linux Forumのこと。ソニーと松下電器産業が中心となって2003年6月に設立した。日立製作所やIBM社,オランダRoyal Philips Electronics社,韓国Samsung Electronics社,シャープ,東芝などが名を連ねる。デジタル民生機器向けLinuxの第1版のソース・コードを公開したのが2003年11月末で,CELF設立からわずか5カ月弱と短かった。第1版では起動時間と終了時間の短縮や消費電力制御機能の強化などを図った。

 CELF設立当初は,デジタル民生機器向けのLinux仕様を作ることを目指し,要求仕様の第1版を2004年6月に公開した。しかし,その後CELFは標準仕様の策定を目指すのではなく,パッチを基に議論するという草の根型の活動方針に転換した。標準Linuxカーネルの開発を手掛けるコミュニティーから「Linuxカーネルを分岐させてしまう」などの反発があり,広く賛同を得られなかったためである。

 CELFの方針転換は,メンバー間でのソース・コードの流通が進むという効果をもたらした。多数の開発成果が出てきたことにより,メンバーが積極的にCELF内でソース・コードを融通し合うようになった。その好例が,パナソニックモバイルコミュニケーションズが2006年2月に公開した,2.4系カーネルに対応するARM/Thumbコンパイラである。2.6系カーネルに対応するコンパイラを必要としていたソニーが,パナソニック モバイルが公開したコンパイラに着目し改変を進めている。そしてその成果をパナソニック モバイルが将来使うことを検討しているといった具合に,連鎖的に開発成果を生んでいく正のフィードバックが働き始めている(図)。

図 CELFで大量のソース・コードが流通
図 CELFで大量のソース・コードが流通(日経エレクトロニクス2006年5月8日号より抜粋)