大容量のNANDフラッシュ・メモリを内蔵したHDD。NANDフラッシュ・メモリとHDDの「いいとこ取り」をした部品といえる。現状ではフラッシュ・メモリの価格はHDDと比べて高く,書き換え可能回数や書き込み速度などは,必ずしもHDDを上回っていない。

 Hybrid HDDの第一の狙いは,OSやアプリケーション・ソフトウエアの起動時間,休止状態から復帰する時間の短縮にある。通常はディスクから読み出すOSのカーネルやデバイス・ドライバ,アプリケーション・ソフトウエアをフラッシュ・メモリに格納しておく。これにより起動時に機構部を動かす必要がなくなる。フラッシュ・メモリは,読み出し速度が約50~60Mバイト/秒と2.5インチHDDの実効転送速度に比べて高速なため,データの転送時間も短縮できる。

 Hybrid HDDのもう一つの大きな利点は,消費電力の削減である。ノート・パソコンに使った場合に電池駆動時間を延長できる。Hybrid HDDで電力を削減できるのは,フラッシュ・メモリに格納したソフトウエアを読み出す場合,HDDの機構部を動かさずに済むからである。Hybrid HDDはフラッシュ・メモリを書き込みキャッシュとして使うことで,さらに電力を減らすことができる(図)。

図 書き込みキャッシュにも活用
図 書き込みキャッシュにも活用
Hybrid HDDは,NANDフラッシュ・メモリを書き込みキャッシュとしても活用する。HDDに記録するデータはまず,DRAMに格納する((1))。通常は次にディスクへ書き込むが,Hybrid HDDはフラッシュ・メモリに複製する((2))。データをフラッシュ・メモリに蓄積していき,書き込みキャッシュ用の容量がいっぱいになった段階で,まとめてハード・ディスクへ書き込む((3))。(日経エレクトロニクス2006年6月5日号より抜粋)