一人あるいは数人のチームで製品を組み立てる生産方式。1990年代に入ってから,情報機器メーカーや電機メーカーが,情報機器やAV機器製品の組立工程で導入するようになった。ベルトコンベア上に自動工作機械,作業者などを配置した流れ作業型のライン生産方式と比べると,(1)作業者が複数の工程を作業する多能工である,(2)複数の作業者で行う場合でもラインの長さは短い,(3)プル式の生産に対応しやすい---といった違いがある。

 こうしたセル生産方式は,多品種少量生産に向き,生産変動に対応しやすいという特徴を備えている。

 多品種少量生産に向く理由は,作業者が複数の工程を手作業で組み立てていくので,部品棚/箱を並び替えれば生産品目を簡単に変えられるからである。生産量は,いくつのセルでその生産品目を生産するか,あるいはセルに投入する作業者の人数でコントロールできるので,生産変動にも比較的対応しやすい。その分,需要に合わせて生産量をコントロールしやすいので,多くの在庫をもたなくても対応できるともいえる。複数のセルがある場合は,セルによって生産品目を分けるといった対応も可能である。

 これに対し,ベルトコンベアを利用した流れ作業の生産ラインでは,組み立てる製品を変更する場合に手間がかかりすぎるため,こまめに生産品目を切り替えることは難しい。このため多品種少量生産には向かず,ある程度まとまった量でなければ,生産効率が悪くなる。一括して生産して在庫としてもち,必要に応じて払い出すことになりやすいといえる。

 作業者にとっては,流れ作業の生産ラインのように単純作業にならず,作業者の担当部分が広がると同時に,スキルアップが生産性の向上につながりやすいので,士気や責任感が高まる。

 セル生産といっても,(1)一人で生産する方式,(2)一人の作業者が複数の工程を担当しながら,複数の作業者で分担して生産する方式,(3)一つのセルの設備を複数の作業者で共用しながら,一つ一つの製品は一人の作業者が生産していく方式---の大きく三つの方式に分けられる。

 (1)の一人で生産する方式は,他の作業者に左右されずに作業を進められるが,作業者は全行程をマスターする必要があり,高いスキルを求められる。加えて,一人で1セルとなり,検査装置などで高額な機器が必要な場合には設備投資が膨らむ可能性がある。また,多数のセルを用意する必要がある場合には,セルに部材を供給する手間が増大し,全体としては効率よく生産できないケースもある。

 (2)の複数の作業者で分担して生産する方式は,(1)の方式と比べると担当する工程が少ないので,その分,作業者の習熟期間は短くて済む。作業者の担当する工程を順に増やすなどにより,多能工の作業者を養成するのに向く。半面,複数の作業者で共同して生産するので,全体の生産性が習熟度の低い作業者に左右されやすい。

 (3)の一つのセルを複数の作業者で共用する方式は,セルの設備を作業者が順に利用しながら一人で生産することになるので,設備の利用効率は高められる。半面,作業中に他の作業者を追い越すことは難しいため,最も遅い作業者によって,セル全体の生産性が左右されやすい。