ICカードや著作権保護機能を備えた音楽プレーヤでは,内部の動作や処理手順が外部に漏れると一般にセキュリティが確保できなくなって困る。そこで,機器や回路の中身が外部からは分析しにくくすることが多い。こうした,内部解析(リバース・エンジニアリング)や改変に対する防護力のことを耐タンパ性と呼ぶ。

 耐タンパ性を高める技術には,論理的な手段と物理的な手段の2種類がある。例えば,ソフトウエアであれば,逆アセンブラなどで簡単に解析できないようにする難読化技術などである。ハードウエアであれば,LSIを解析するために保護層をはがすと,内部の回路まで破壊されるようにする技術などがある。

 こうした技術は以前は特殊なものだったが,最近では個人情報や暗号化鍵データ,非公開の暗号化プログラムなどを格納しているデジタル家電機器が普及し,重要な基盤技術になってきている。また,指紋センサのような生体認証デバイスを搭載した機器も増えており,情報を不正に読み出されないようにする防護策の強化も求められている。

 ソフトウエアの耐タンパ性を高める技術は「タンパ・レジスタント・ソフトウエア技術」と呼ばれる。ソフト内部に格納した非公開のアルゴリズムや暗号化鍵データを隠ぺいする。例えば,著作権保護技術が施されたDVDの映画タイトルをパソコンで再生するソフトウエアなどに採用された実績がある。

 ハードウエアに対する耐タンパ性の確保手段は,かなり以前から提案されている。ICカード用のチップは,いくつもの技術を併用することで守っている。ただし,こうした技術の詳細は一般には知られていない。情報が広がるのを恐れて特許を申請しないことも多い。

図 ハードウエアの耐タンパ性を増す方法として知られている技術
図 ハードウエアの耐タンパ性を増す方法として知られている技術日経エレクトロニクス2000年3月27日号より抜粋)