どのような製品でも品質にばらつきはある。寸法や質量が,カタログなどに記載されている数値と実際の製品で一致することはまずない。ある程度の誤差があるはずである。

 この誤差に対して,製品を購入したユーザーが不満を感じるかどうかは,製品や項目によって異なる。JISやISOなどの標準規格で決まっている場合もあるが,許される誤差の範囲(規格幅)を決めることは設計者の重要な仕事だ。

 しかし,規格幅を小さくすればするほど良いわけではない。必要以上に厳しくした規格に対応するために,加工や組み立てに時間が掛かったり,不良品率が高くなるなど,コストアップの要因になるからだ。

 そのため,製品の品質のばらつきと規格幅の関係を定量的に把握しておくことが重要になる。この規格幅とばらつきの関係がどうなっているのかを表現するのが工程能力指数である。製品の品質目標である規格幅を,どれぐらいの割合で実現できるかを表現するものだ。

 具体的には,規格幅を標準偏差の6倍(6σ)で割った値がCpとなる。

 標準偏差とは,ばらつきの広がり具合を表現するもの。抽出したサンプル個々の値とそれらの平均値の差を二乗した値を,すべてのサンプルについて合計。この合計値を,サンプル数から1を引いた値で除して「分散(不偏分散)」を求め,さらにその分散の平方根を計算すれば標準偏差が求まる。

 具体的には,Cpが1の場合にその工程能力で規格外になる確率は0.27%となる。品質の目標(不良率)を0.27%よりも小さくしたいのならば,工程(構成する部品の寸法公差や組み立て手順など)を変更するか,規格幅を考え直す必要があるわけだ。

 例えば,ある部品の寸法公差が「10mm±0.01mm」だったとする。実際に加工した部品の寸法を計測した結果は,10.009mmの部品もあるだろうし,9.991mmの部品もあるはずだ。

 十分な数の部品を計測し,それらの値から平均値と標準偏差を計算する。もし,標本の平均値が10mm,標準偏差が0.001mmだとすると,Cpは規格幅(0.01mm×2=0.02mm)を6σ(0.001×6=0.006)で割った値,つまり約1.666となる。これは,200万回の作業でも1回しか規格外が発生しないほどである。

 ただし,実際の製品の平均値(標本平均)は規格幅の中心と異なる場合が多い。そこで必要になるのがCpkだ。Cpkは,標本平均と近い方の規格値(下限または上限)との差を,標準偏差の3倍(3σ)で割った値である。

 ただし,標本平均と遠い方の規格値がどれだけ離れているかによって,規格外の発生確率は変わる。つまり,Cpkからだけでは規格外の発生確率は判定できない。

 標本平均が規格の中心にある場合にCpとCpkは一致するが,通常,CpよりもCpkの方が小さい。Cpkは,標本中心が規格の中心から離れるほど小さくなっていき,片側の規格値と一致した場合にCpkは0になる。

 ちなみに,品質管理手法で注目を集めている「シックスシグマ」は「100万回の作業で不良が発生する回数を3.4回未満にする」ことが目標。これは,不良の判断基準となる規格の上限(もしくは下限)が4.5σの位置にあるのに相当する。つまり,片側規格でのCpが1.5となる。

【訂正】標準偏差の説明のところで一部誤りがありました。 既に訂正してあります。(2008/10/10)