静電気放電のこと。electrostatic dischargeの略。直接ESDと間接ESDの2つがある。それぞれは帯電した人体,絶縁物などである。放電形態は異なる。LSIの微細化や機器の軽薄対象化が進んだことで,機器の静電気耐性が低下している。そのため,機器の内部や外部などで発生した静電気が機器の動作に影響を与える可能性が高まっている。湿度の低い北米や欧州,中国では特に機器のESD保護対策が重要である。

 機器を設計する際には,静電気をエミュレートした高電圧を電子部品に印加する静電気耐性試験を行う。エミュレートする際のモデルは3つ。(1)HBM(human body model:人体モデル),(2)MM(machine model:機械モデル),(3)CDM(charged device model:デバイス帯電モデル)である。HBMは帯電した人体が電子部品に接触することが原因で発生する静電破壊をエミュレートするモデルで,機器使用時に発生する静電気破壊を想定したものである。これに対して,MMとCDMは機器製造時に発生する静電気破壊を想定している。例えば,LSIなどの電子部品は納入時にはテープに固定されており,このテープをはがす際に電子部品は帯電してしまう。帯電した電子部品が接地面などに接触すると放電を起こし,瞬間的に大きな放電電流が流れる。そのため,電子部品が破壊してしまう恐れがある。