路車間通信に使われる通信メディアの一つ。現在は,VICS(道路交通情報通信システム)の通信メディアとして,交通情報を配信する用途で用いられている(図1)。

 2.5GHz帯の電波を利用する電波ビーコンは,主に高速道路で使う。最大通信距離は70m。データ伝送速度は64kビット/秒と低い。2007年度から電波ビーコンの周波数帯を2.5GHz帯から5.8GHz帯に移行し,ETCに使うDSRCと統一する計画がある。DSRCを使うと,データ伝送速度は4Mビット/秒に高まる。双方向通信も可能となる。

 光ビーコンは赤外線を利用しており,一般道路での情報提供で使われている。最大通信距離が約3.5mと短いため,車線ごとに個別の情報を提供することが可能である。双方向通信にも利用できる。

 最近では,電波ビーコンや光ビーコンを安全運転支援システムに利用する実証実験が増えている(表1)。交差点や見通しの悪いカーブといった数秒以内に出くわす場所の情報を,画像などによって運転者に伝える。一般道路では警察庁が光ビーコンを利用するシステムを,高速道路や一部有料道路では国土交通省 道路局が電波ビーコンを使うシステムの活用を検討している。

 ビーコン(beacon)は,もともと信号や標識のことを意味する。そのため,無線LANのアクセス・ポイントから定期的に発せられる信号や,通信データの制御情報部分などもビーコンと呼ばれている。

図1 自動車に情報提供するためにインフラ側が用いる通信メディア
図1 自動車に情報提供するためにインフラ側が用いる通信メディア
表1 公道を使った大規模実証実験に用いる路車間通信と車車間通信
表1 公道を使った大規模実証実験に用いる路車間通信と車車間通信(図,表とも日経エレクトロニクス2006年5月8日号より抜粋)