日本版の独立ファウンドリを設立するための企画会社の設立が,2006年1月に正式に発表された(Tech-On!関連記事1同関連記事2)。企画会社の資本金は当初1億円。日立製作所,ルネサステクノロジ,東芝の3社が共同出資した注1)。それまで報道されてきた「共同ファブ」ではなく,「独立ファウンドリ」を目指している点が注目された。

TSMCと真っ向勝負

 共同ファブの場合,出資元の親会社向けにLSIを製造するだけなので,事業規模を拡大することは難しい。一方,独立ファウンドリは世界中の大手機器メーカーやファブレスを相手に事業を拡大できる。このため,LSI製造の分野で勝負するなら,独立ファウンドリを目指すべきとの指摘はこれまでもあった。なお,今回は設計と製造を同時に請け負うのではなく,LSI製造だけに特化したファウンドリを目指す方向である。

 独立ファウンドリを目指す場合,最大手の台湾Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd.(TSMC)と真っ向から勝負することになる。独立ファウンドリは当初の投資金額が2000億円規模と見られ,投資規模では勝負にならない。技術的な取り組みによってTSMC をしのぐ製造コストやTAT(turn-around time)を実現しない限り,まともな勝負は難しいとの指摘が多い。

 使用するプロセスに関しては,ユーザーの要求を調査した上で決めていくが,現状では65nmノード(hp90)のLSI 製造から着手していく方向である。ゼロから工場を建てるか,既存のLSI工場を利用するかは決まっていない。しかし,TSMCが65nmノードの試作をすでに開始していることを考えると,新工場をゼロから建設していたのでは事業機会を失う可能性が高い。

半年以内に事業計画を作成

 これまで日本版の独立ファウンドリを巡る議論はなかなか前進しなかった。その最大の理由は,そもそもSiファウンドリそのものが成功する確率の低い事業だからである。数あるSiファウンドリの中で,まともに儲かっているのはTSMCだけとの指摘が多い。このため,新設する企画会社では独立ファウンドリの採算性を徹底的に調査し,半年以内に事業計画を作成する。これまでは日立がその役割を担ってきたが,中立性を維持するために共同出資の企画会社を立ち上げた。

 企画会社には出資元の3社から均等に人材を集める方向である。社長には元NECエレクトロニクス副社長で日立製作所 嘱託だった橋本浩一氏が就任した。企画会社の設立後,3カ月間は独立ファウンドリの実現可能性を議論し,次の3カ月間で具体的な営業活動や資金調達を進める。もちろん,事業化が無理と判断されれば,企画会社と共に今回の構想はなくなる注2)。事業化する場合には,独立ファウンドリを中立企業として立ち上げるために,資金の大部分は国内外の投資ファンドから調達し,国内LSI 大手3社との関係は弱める方向である。


注1)当初は5社が共同出資する予定だったが,NECエレクトロニクスと松下電器産業が抜けて3社になった。

注2)今回の構想を積極的に推進している日立製作所社長の庄山悦彦氏は「会長に就任する2006年4月までには(やるか,やめるか)決着をつけたい」と12月の社長交代会見で語った。